――――――随分と派手にやったじゃないか。
感心したように、一種の感嘆すら湛えた賞賛の声が背後から聞こえた。
ぱらぱらと軽く弾ける拍手を聞き、ゆっくりと振り返る。
「……は、お前の部下がやられたんだぞ?それはリーダーとして、どうなのかな」
「私の与り知らない所だったからな。自己責任、というやつだ」
「酷いリーダーだ」
「まったくだ」
お互いにくつくつと笑い合うには、この状況は些か異質だった。
Laughingpixyの足元には、先程までデュエルをしていたハノイの騎士達が転がっている。
全員敗者だ、意識はない。立て続けに、若しくは複数人を相手に渡り合い見事勝利しただ一人のみ立っているのだろう。
だがそのLaughingpixyの目は、いつものアバターの瞳の色であるマゼンダではなく、薄暗いこの路地裏でも煌々と輝く真珠色だった。それが指すところは一つだ。
真珠色がうっそりと蠱惑的に細まる。
「で?次はお前が相手か、リボルバーサマ?」
「魅惑的な御誘いは有り難いが、遠慮しておこう。満身創痍の相手に対して死体蹴りをするような高尚な趣味は持っていないのでな」
「は、腐っても『騎士』だということか」
「何を盛られた?」
「………違法プログラムを不意打ちでね。こうして『俺』が出てくる前にだ、対応ができなかった。完璧な新作プログラムなのかアンチウイルスプログラムも生成が追い付かない」
こうしてハノイの騎士達を相手取る前、彼らに集団で囲まれ、不意打ちで違法プログラムを強制ダウンロードされた。
ウイルス入りのデータは瞬く間にアバターに広がり、全身が上手く動かないままなし崩しに彼らのデュエルに応じていた。
何とか勝ったはいいが、身体は上手く動かない上に思考もはっきりしない。
リボルバーの言う満身創痍とはあながち間違いではないのだ。
「そのままログアウトするつもりか?」
「そうなるな。除去プログラムを作るのに専念したい」
「ならば私が除去プログラムを作らせよう」
「…ほう?」
リボルバーの申し出に細めていた真珠色を少し見開く。
正直意外ではなかった、予測は出来た話だ。だがはっきりと申しだされるとは。
「一応だが部下の過失は私の過失だ。私が責任を取ろう」
「は、だが放っておけばお前の目的は自動的に達成されるぞ?勝手に野垂れ死ぬ生き物を敢えて助けると?」
「私は己の手で直接お前を殺す。他の人間にみすみす獲物をくれてやるつもりはない」
「騎士が聞いて呆れるな」
「そしてこれも本音だが、お前に貸しを作るのも悪くない」
部下をやられた上司の顔かよと思う。
申し訳ないと暗に言っている割には、その表情はどこか悪戯の成功した子供のような其れだ。
「そのままログアウトをすればフラッシュバックは壮絶だろうな。回復プログラムも兼ねたものを渡しておく」
「随分とサービスがいいな」
「ふ、相応の見返りを期待している。…ここは人目につく、移動するぞ」
こんな目に遭っている元凶の親玉に保護されるとは何とも奇妙なものだなと思うが、リボルバーの言い分は一理ある。
そもこんな身体では碌な抵抗もできないし、彼が『高尚な趣味』を持っていなかったことをラッキーだと思う事にして、その場からログアウトした。
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