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部屋王決定戦なるものが開催されてしまった。
非常に帰りたい。
そして爆豪は「くだらねえ先に寝る」と部屋に戻っているようだ。アイツおぼえとけ。


切島の部屋は大漁だとか必勝だとか、とにかく熱いテーマのグッズがたくさん飾られていた。
猟師でも目指しているのか?
なんだろう。こういうの。…えっとあれだ。暑苦しい。
葉隠から「彼氏にやって欲しくない部屋ランキング2位くらいにありそう」という評価を頂いた。2位というのがかえってリアルだ。


障子の部屋は、何もなかった。
ローテーブルと座布団、布団。以上。
ミニマリストのようで、曰く昔から物欲がなかったらしい。
峰田は「こういうのに限ってドスケベなんだぜ」と言っているが、お前はどうしてそう障子をドスケベ認定したいんだ。お前だけだよ。


5階に上がって次は瀬呂。
瀬呂の部屋は何とエイジアンだった。エスニックで統一されている。
とてもお洒落だが気取らないものがあった。
ギャップの男だと本人は言っているが、本当にその通りだと思う。
すごいな、こういうのこだわるタイプだったのか。


そして次は、轟の部屋だ。

轟の部屋は零仔は先に見ていたので驚きは特にない。
だが皆は驚き通り越して唖然としていた。まあ即日リフォームってのは驚くわな。
最早備え付けられたエアコンが浮いて見える。


男子最後は砂藤だ。
砂藤の部屋は、基本的な所は尾白とよく似ていた。
部屋ですぐ入った場所にあるオーブンが気になる。そしてそれ以上に部屋に甘い匂いが漂っていた。

「まーつまんねー部屋だよ」
「轟の後は誰でも同じだぜ」
「ていうか甘い香りするのこれ何?」
「え?…ああイケね!!忘れてた!!だいぶ早く片付いたんでよ、シフォンケーキ焼いてたんだ!!皆食うかと思ってよォ…」

ケ ー キ だ と ?

「ホイップがあるともっと美味いんだが…食う?」
「「「「食う〜!!!!!」」」」
「模範的意外な一面かよ!!」

砂藤のシフォンケーキは最高においしかった。
フワッフワだ。やはり甘いものは人を幸せにする。つまり砂藤は人を幸せにする。
個性の訓練がてら作ったりするようだ。砂藤、その個性を大事にするんだぞ。


男子部屋はこれで終わりだ。
一旦一階へと戻り、女子棟へと向かう。
死ぬほど嫌だ。何としてでも回避してやる。
零仔の悲壮な決意など露知らず、A組の侵攻者達は耳郎の部屋を襲った。

全く乗り気でなさそうな耳郎の部屋は、なんというか。すごくパンクでロックだった。
ギター、ドラム、ベースなどの楽器が並び、何とこれら一通り弾けるのだという。
ロッキンガールだ。
すごくカッコいい部屋だと思うが。

「女っ気のない部屋だ」
「ノン淑女☆」

ここぞとばかりに物をいう上鳴と青山、耳郎のハートビートが彼らを襲う。
今のはお前らが悪い。


次は葉隠の部屋。
正直に言って、零仔好みの大変可愛らしい部屋だった。
ぬいぐるみが所狭しと並び、ベッドにはおおきいテディ。
可愛い。
峰田は正面突破で葉隠の箪笥を開けようとしていた。お前は一回捕まれ。


次は芦戸の部屋。ピンクと紫の、実に芦戸らしいピンキーな部屋だ。
ハート柄のマットとゼブラ柄のカーテンがとても可愛い。


麗日の部屋は一転してとても目に優しいものだった。
扇風機が置いてあるのは電気代節約の為だろうか。
何処までも節約女子だ。いい嫁さんになるよ。


そして5階まで来た。
まず最初は誰だ、と探して、蛙吹がいない事に気づく。

「あ、梅雨ちゃんは気分が優れんみたい!」
「優れんのは仕方ないな。優れた時にまた見してもらおーぜ」
「……」

大丈夫だろうか。
一番仲のいい女子だから、とても心配になる。
後で様子を見に行こう。

(…大丈夫かしら)


次、八百万だ。
個人的に一番気になっている。
彼女は恥ずかしそうな表情をしながら扉を開けると、飛び込んできたのは部屋をみっしりと埋める巨大なベッドだった。
な、なんだあれ。

「でけえーー!!!狭!!どうした八百万!!」
「私の使っていた家具なのですが…まさかお部屋の広さがこれだけだとは思っておらず…」
(((お嬢様なんだね)))

これが生まれの違いってヤツだな。



さて。
ここまで来てしまった。

「さて…」
「最後は、栂野の部屋だ!」
「う゛っ…」

常闇がそうしたようにドアの前にもたれかかって何としてでも入れないという強い意志を見せる。
しかし芦戸や葉隠が退かしにかかった。やめろ!!

「待って!本当に待って!?」
「待たん!!退くんだ!!」
「いーやー!!!!」

火事場の馬鹿力ってヤツは此処で発揮する。
芦戸、葉隠の二人を一人で押していく。

「くっ何て力だ!!」
「何としてでも見せないつもりか!?そこまでされたら逆に気になって仕方がねえ!!」
「見るな!!寝ろ!!!っうあ!?」

突如身体がふわりと浮いた。
後ろを見ると麗日が「スマン!」といった顔で掌を向けていた。おま、個性で浮かしよったな!?
個性の無駄遣いはよすんだ!

「さあ、邪魔者はいなくなった!御開帳〜〜!!」
「あああああああああああああ」

ドアが開けられてしまった。
死んだ。もう生きて行けない。
A組の面々の前に広がったのは、THE・少女趣味の部屋だった。
窓際に所狭しと並べられたテディ、柔らかなソファに積まれた様々な形のクッション。ウサギと猫のスリッパ。
柔らかなベビーピンクのカーテン。
全員無言になった。
今死にたい。この個性を以て。

「………めっちゃ、女子の部屋だ………」
「スッゲー意外……」
「栂野ってめっちゃ女子力たっけーんだな……つーか突っ込みてえんだけどなんでこの女子女子した部屋の天井からいかついサンドバッグがぶら下がってんだ!?」

そう。この女子力溢れる部屋にぶら下がる異物。
サンドバッグだ。実家から持ってきた。

「トレーニング用に…身体、鈍るから…」
「ストイックだな……」

天井まで浮かされたのでもう膝を抱えて徹底的に表情を見せないスタイルで行く。

「死ぬ…恥ずかしい……死ぬ…誰にも見られないと思ってたから…こういう部屋に……したのに………………」
「可愛いじゃん!?すごい女子部屋!!」
「あのベッドに乗ったギャングオルカのぬいぐるみスッゲー異質だけど!?」
「う゛…」
「あ、あれこの前ショッピングモールのゲーセンでUFOキャッチャーにあった景品じゃん!あの後取ったんだ〜」

そうだ。アレがあるから。
あれは、零仔の宝物なのだ。大事にここまで持ってきている事を轟には知られたくなかった。
ちらりと手の隙間から覗くと、轟は驚いたようにこちらを見ていた。
見るな。頼むから。恥ずかしいから。

皆は可愛い可愛いと褒めてくれたが、零仔のライフはもうゼロだ。
麗日に個性を解除してもらった後も顔をまともに見せれなかった。死ぬ。

そしてこれが最後だったようで、皆はもう一度共同スペースに集合した。




「えー皆さん投票お済みでしょうか!?自分への投票はナシですよ!?…それでは!!爆豪と梅雨ちゃんを除いた…第一回部屋王暫定一位の、発表です!!!」

八百万に作ってもらった投票ボックスに手を突っ込み、芦戸が引いたそれは。

「得票数5票!!圧倒的独走単独首位を叩き出したその部屋は――――――砂藤ーーー力道ーーー!!!!」
「はぁあ!!?」

砂糖が一番驚いている。
理由は明白だ。

「ちなみに全て女子票!理由は「ケーキ美味しかった」だそうです」
「部屋は!?」

部屋関係ねえ。
無駄に零仔の心が傷ついただけである。
もうやだ。やすみたい。
心に深い傷を負った。

「うわあ栂野ソファで不貞寝してる…」
「よほど心に深い傷を…」
「本気で抵抗してたもんな…」

うるせえやい。


(……でも。楽しかった)

色々あった。クラスがバラバラになってしまうかもしれなかった。
今回の部屋王なんてやったのは、皆、いつもの日常に戻りたかったからなのかもしれない。
皆で切磋琢磨して、乗り越えていく日常に。


(ありがとう、皆)


優しい皆が大好きだ。
ここに入学して本当に良かった。


(大好きよ)



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