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初めての寮からの登校。
徒歩数分もかからない分早起きしなくてもいいなあと思ってはいたが、身についた習慣というものは中々取れないもので結局いつもの時間に起きてしまった。
祖母は大丈夫だろうかと、まだ一日目だというのに心配になってしまう。これがホームシックだろうか。

寝ぐせのついた頭で食堂に行くと、既に大体のメンバーが集まっていた。

「あっ栂野さんおはよ〜!眠れた?」
「ええ、それなりに」
「ぽいね〜」
「?」
「寝ぐせヤバイよ栂野」
「えっっ嘘!?」

耳郎に指摘されて窓を見ると、そこに反射して映っている自分の髪に自分でビビった。
ふわっふわだ。

「嘘待ってこんなにひどかったの」
「どんだけ元気よく寝たんだよ栂野〜!」

上鳴が茶化してくる。しかし茶化されても仕方がない寝ぐせだ。
こ、これは。風呂上がりの湯婆婆か????

「すぐ戻るわ」
「いってら〜」

速攻でエレベーターに飛び乗り部屋に爆走で戻ると、即効で髪を直して再び食堂へ舞い戻って来た。
この間実に数分、自分でも誇っていい好タイムだったが戻って来た時には皆集合していた。
最初にいた面子は零仔の髪がちゃんと直っている事にニコニコしている。ニコニコされた。

「はよ。寝坊か?」
「あらおはよう。ううん、寝ぐせ直しに行ってたの。貴方も髪の毛元気ね」
「マジか」

挨拶して来た轟の髪は白い方が元気良く跳ねている。
それにクスクス笑っていると。

「おはよう零仔ちゃん」
「!梅雨ちゃん、おはよう」

蛙吹だ。昨日気分が優れないと部屋に籠っていた。
顔色は大丈夫そうだが、ずっと心配していた。

「体調は大丈夫?もう平気?」
「ええ、大丈夫よ。心配かけさせちゃってごめんなさい」
「いや…私が掛けさせたであろう心配に比べたら……」
「ケロッ」

いつも通りの蛙吹に安堵が広がる。
良かった。胸に手をついてほっと息を吐いた。



朝食を食べ終えた後は各々部屋に戻って制服に着替え、学校に登校した。
皆で揃って登校というのは不思議な気分だった。

皆で下駄箱にいるというのも変な気分で、落ち着かないまま自分の下駄箱を開けて上履きを取り出そうとする。

「…ん?」

いつも下駄箱にないものが入っていた。
綺麗に揃えてある上履きの上にちょこんと乗っているそれを手に取る。

(手紙…?)

何だろう。差出人は便箋に書かれておらず、間違ってここに入れてしまったのでは?と思ったが、差出人名は書いてないのに『栂野零仔さんへ』とご丁寧に宛名は書かれている。
果たし状か何かか?

「零仔ちゃん、どうしたの?」
「いや…これ、なんか入ってて。お手紙なんだけれど、差出人書いてないの」
「ケロ……それって…」
「え!!?栂野それもしかしてラブレターじゃない!?」
「マジで!!!????」

芦戸の声で先に行っていたA組面々が戻って来た。おま。
「これ知ってる!!少女漫画で見たやつだ!!」と葉隠と麗日が大興奮しているが、果たしてそのラブレターというやつなのだろうか。

「果たし状とかじゃないの?」
「栂野、お前って割と脳筋だよな」
「失礼ね」

瀬呂は失礼な奴だ。
しかし、ラブレターとやらの可能性も捨てきれないのも事実。
中身が見えないものかとかざしてみるものの、普通に見えるはずもなく。
手紙なんて貰った事もない。好意的な手紙ならば猶更。
何だか急にドキドキしてくる。

「栂野」
「ん?どうしたの轟くん」

轟は何やら難しい顔をしていた。
その目線が手紙に注がれている。気になるのだろうか。

「大丈夫よ、これが果たし状なら応じないわよ」

手紙をヒラヒラさせながらそう言うが、轟の表情は晴れない。
果たし状の心配ではなかったのか?と首を傾げる零仔、自分の脳筋具合に気づいていない。

「…それ、」
「うん?」
「果たし状じゃなかったら、応じんのか」

それは、どういう意味だ?
一瞬、それが思い浮かんだ。果たし状じゃなかったら。
轟はその一瞬後、ハッとしたように。

「……悪ぃ、なんでもねえ」
「え、ちょっと、」
「早く行かねえと、先生来ちまうぞ」

さっさと行ってしまう轟を、急いで上履きを履いて追いかける。
彼は何を言いたかったんだろう。何を聞きたかったんだろう。
手紙の内容と一緒に、それが気になって仕方がなかった。



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