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数分後。
結果を見れば、緑谷・麗日チームの勝利に終わった。
だがそれは結果だけを見ればの話だ。
爆豪・飯田はほぼ無傷、一方緑谷は爆豪の爆発をモロに受けた傷や個性使用パンチによる反動で腕がバッキバキになったらしく、気絶。
麗日も個性の使い過ぎで酔いが来たらしく、画面端でゲロっていた。
「負けた方はほぼ無傷で買った方が倒れてら…」
「勝負に負けて試合で勝ったというところか」
「訓練だけど」
切島、常闇、蛙吹のコメントが入る。
余りに壮絶な戦闘だった。いつ中断が入ってもおかしくないほどの。
爆豪の放った攻撃の中には緑谷を殺してもおかしくないものまであったのだから。
緑谷以外が戻って来たので講評が始まった。
今回のMVPは間違いなく飯田だろう。
状況に応じた判断を下し、その場の設定に乗じた対応を下していた。爆豪の暴走、緑谷のアホみたいな大規模攻撃、麗日の訓練だから許されたようなものである攻撃行為があったからこそ、「その状況下において正しい判断と行動をしていた」飯田は対応に遅れてしまい、負けたのだ。
―――というのをほぼ八百万が言ってくれた。
その間、ずっと爆豪は俯き、無言だった。
***
さて最初のビルは爆豪と緑谷の所為で木っ端、場所を変えて二戦目に入る。
次は轟・障子のBチームヒーロー側VS葉隠・尾白・零仔のIチーム敵側だ。
「尾白くん栂野さん私ちょっと本気出すわ手袋もブーツも脱ぐわ」
「う、うん……」
尾白が引いている。
分かる。分かるぞ尾白。
それは透明人間としては正しい判断だが、女の子として倫理的に如何なものか。
いや、まあ利点が大幅にありすぎる。から、大目に見よう。一応個性上は正しい判断だから。
「さて…どうしよっか。尾白君の個性はその尻尾だったよね?」
「ああ。解らないのが障子の個性…轟の個性もちょっとまだ理解し切れてない」
うーん、と唸り始める二人。
ここは知恵を絞り合った方がいいだろう。
「多分だけど、障子君はあの複製腕に自分の体の一部を投影できるから、索敵に向いた個性なんでしょう。それに体力テストで見た通りパワーも屈指。ただの索敵個性だと思ったら一瞬でやられる。ただ…」
「ただ?」
「……問題は、轟君。彼の個性は特待生試験でちらっと見たけど、多分身体の右半分で凍らせて左半分で燃やす個性。まだ氷の方しか見れてないけど、最大出力は未知数。このビル全部凍らすのなんてきっと訳ない」
「つっ、つええ……バケモンかよ…」
「わざわざチマチマ個性使わず、きっと一気に凍らせて私達の動きを封じてくる。尾白君も葉隠さんもまず無対策では完封されるわ」
「……その言い方だと、栂野さんに対策はあるんだね?」
葉隠の言葉に言葉は返さず頷いた。
「……私の個性は、『温度操作』。物質や気体の温度を自在に変えられる…基本、上限はないけど…あんまり一気に変えたりすると、自分の体温調節できなくなっちゃうのがネックね」
「弱点らしい弱点がないすごい個性じゃん!!」
「でも、この個性そのものに攻撃性はないの。だから私にできるのは、個性によって起こされたフィールドの状態異常を一度ゼロに戻す事。それだけよ」
「十分だ」
「動きを封じられなければ、私が気配消してテープを巻けばいいしね!」
「気を付けてね。…轟君が一番危険だけど、障子君の複製腕で、耳を複製されてたら多分足音とかでバレる可能性もあるから」
「ヒエ〜!気をつけよ!!」
「……それと、」
「ん?」
零仔は一瞬黙った。
言いづらそうに、言い淀み、口を噤み、迷うように目を泳がせる。
「……私、まだ個性をちゃんと制御できないの。貴方達の保温は死守するけど、もし危ないと思ったらすぐに中断させて」
「ん!オッケー!」
「分かった。でも栂野が今回の鍵だ、頼んだ」
「………、……わかった」
迷いなく、頼りにしていると。
命がかかっている。分かるはずだ、この個性は一歩間違えれば自分達の命を脅かす危険なものだと。
なのに、躊躇なく背を預けるのは、彼らは命知らずなのか、それとも。
………わからない。
どうすれば、いいのか。
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