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核をどこに置くかを話し合った後、人員配置を考える。
尾白は核の部屋に待機、葉隠は同階にて捕縛要因として待機してもらうことにする。
零仔はその一階下で待機、迎え撃つ係だ。
「轟君はどうも集団戦闘向きの個性じゃないから、障子君を安全な所に置いてるかもしれない。私が轟君を留められる前提の話になるけど、障子君が来たら対処をお願い」
「ああ、やってみせるよ」
《では、第二回戦、スターート!!!》
インカムからオールマイトの号令が響いた。
中々に耳が痛いが我慢しよう。
次の瞬間、一気に空気が冷え込む感覚がして、次の瞬間ビル全体が一瞬で凍り付いた。
壁、柱、床、換気扇などビル内の設備まで丸ごと。何て範囲だ、馬鹿みたいだ。
実戦慣れしてると見た。
『ッ栂野さん!』
「絶対にそこから1mmも動かないで」
ここから仕事に入る。
幸い凍らされているのは足先だけだ。超耐熱・超耐寒仕様になっている足のアーマーからは殆ど冷たさを感じないが問題は葉隠だ。彼女は素足だ。
少しずつ上の階の温度を上げていく。
『栂野さん、足の氷溶けたよ!』
『俺も!』
「なら尾白君、すぐに葉隠さんと合流して葉隠さんを背負うか持ち上げて。酷なこと言うようだけど」
『え゛ッ!!?』
うん、すまん。
透明とはいえ彼女は全裸だ、男子高校生にはきついものだとは分かっている。
「今から一気に温度を上げる。凍ったままじゃ素足の葉隠さんが動き回れないし、今から温度を上げるにしても葉隠さんが火傷しちゃうから」
『わ、…わかった』
『了解!』
「障子君の動きに注意して」
誰かを助けるためにまず自分に打ち勝ってくれ尾白君。
尾白の検討を祈り、上の階の温度を上げていく。上の階の氷のみを溶かすのは後からくる障子を少しでも足止めする為だ。
『ここの氷は全部溶けたみたいだ』
「わかった。すぐに元のポジションに戻って………待って、切るわ」
『えっ?』
「来たみたい」
下の階段からゆっくりと登って来た轟と目が合った。
轟は僅かに驚いたように目を見開く。
「お前……」
「…………」
だがすぐに切り替え、こちらを封じようと氷結攻撃を放ってくる。
あの大規模なものではなく、確実に動きを封じる程度のようなもの。だがこちらもその瞬間アーマーの温度を上げ、氷結を防ぎながら足払いを仕掛ける。
轟は払われる直前に身体をしならせ後方転回で体勢を立て直した。
(……やっぱり実戦慣れしてる。動きを一瞬でも封じられたらテープ巻き付けてやろうと思ったんだけど…そう簡単にもいかないか)
***
八百万と轟、そのほかにもう一名だけいた推薦入学者。
正直名前なんて覚えて無かったし顔も覚えて無かった。
興味がなかったからだ。
入学した直後の体力テストで、推薦入学者でありながら『最下位』だったことで漸く名前を覚えた所だ。
直接の攻撃力も持たず、自分の身体能力のブーストにも使えない。だから、どうでもいいと正直ノーマークだった。
あの折れそうな体で一体何ができる?と、軽く見ていたが。
―――甘く見ていた。
甲冑を模したような形状の脚のアーマーからは湯気が立ち上っている。
表面に付着した氷の破片が凄まじい勢いで蒸発している。それどころか、冷え切った空気の中でアーマーの部分の空気がまるで陽炎のように揺らめいていた。
アーマーが熱を持っている。
彼女の装備からは加熱装置や冷却装置などの付属品が見受けられない。故にあれが恐らく彼女の個性だ。
更に続いてあの身体能力。純粋な身体機能の高さもさることながら身体の使い方が上手い。
純粋な打点の高さでは他の個性には遠く及ばない。だが、総合的な『殺傷能力』なら頭一つ抜けている。
あのアーマーは今は恐らく触れても軽いやけどで済む程度にしか熱されていないだろう。だが恐らく少し調節するだけで簡単にこっちを殺せるくらいにまで温度を上昇させられるはずだ。
強い。
個性なら轟の上位互換だ。
氷は彼女の個性で完封される。
(…予定を変更だ。こいつを捕縛する)
『轟、どうなっている?』
「悪ぃ、想定外だ。核兵器を頼む」
『了解した』
障子の無線に簡潔に応える。
(実戦慣れしてやがるな…肉弾戦はコイツの個性上避けたいところだが……素早く捕縛する以外ねえか)
一瞬でいい、動きを封じる。
一瞬の取り合いだ。
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