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夜嵐との決裂の直後、非常ベルが控室内に響き渡った。
《敵による大規模破壊が発生!》
「演習の想定内容ね」
「え!?じゃあ…」
《規模は○○市全域建物倒壊により傷病者多数!》
始まった。全員に緊張が走る。
「始まりね」という蛙吹の言葉に気持ちが一気に引き締まった。
そして控室の天井や四方の壁がまた開いた。なんだこれ。
《道路の損壊が激しく救急先着体の到着に著しい遅れ!》
「また開くシステム!!」
《到着するまでの救助活動はその場にいるヒーロー達が指揮を執り行う。一人でも多くの命を救い出す事!!》
『STAAAAAAAAAAART!!!!』
一斉に飛び出した。
零仔も遅れぬよう空に自身を打ち出す。大部分が都心部に向かっているようだ。
(私の個性なら…!)
水難の場所に行った方がいいだろう。
素早く方向転換を行った。
水難の場所は大津波が巻き起こっており、板切れに必死に捕まって助けを求めているHUCが見えた。
そして、同じく水難の場所にやって来た他の面々も見える。
そしてここには必ず彼女がいる。
「梅雨ちゃん!!」
「零仔ちゃん、救出は私が行くわ!救出したHUCの人達の状態確認をお願いするわ」
「分かった!気を付けて!」
蛙吹は津波の状態を確認しつつ水の中に入っていく。
その間に出来る事といえばこの場所の安全を確保する事。何とかして見せるしかない。
「栂野!」
「!轟くん…!」
「蛙吹はどうした」
「今救出に行ったわ、この場所の安全確保と傷病者の発見を急ぎましょう」
「おう。俺が捜索に向かうが、そう遠くには行かねえ。お前は此処で後から来る奴らに状況説明と役割分担を頼む」
「了解」
蛙吹がHUCを連れてくる間に数名の他校の人達が手伝いに来た。
幸い皆大柄な人達だった。よかった、傷病者を運べそうだ。
「――現在の状況は以上です。救護所の場所は?」
「控室を救護所として使用する。数名がトリアージなどを担当してくれている。俺達はそこまで傷病者を運ぼう」
「お願いします」
「栂野、あっち側の浅瀬に一人!HUCがいる!」
「どういう状態か大雑把でもいいからわかる!?」
「意識はある!腕に軽傷、頭部に外傷はなさそうだ」
よし。
そうしている間に蛙吹が一人運び込んできた。
ずっと水に浸かっていたHUCだ、唇は紫色で小刻みに震えている。
奥歯がカチカチと音を立てている。シバリングだ。体温が下がっているので熱を生み出す為に身体が生理的に震え始める現象だ。
「軽い低体温症を発症してる。私の個性で温めるわ」
「お願いね。あと傷病者は?」
「あそこの岩陰に一人。頭部に外傷無し、意識あり、腕に軽傷よ」
「分かったわ」
指示を飛ばしながらHUCを個性で温め続ける。
次第にHUCの震えが収まり始めた。唇はまだ紫色だが、シバリングは収まりつつある。
「貴方、返事は出来ますか?」
「…あ、あ。だいじょうぶ、だ」
「意識はありますね。直ぐに救護所へ行きますからご安心ください。…すみません!」
「なんだ!?」
「救護所の近くに、雄英の…えーと、身長が高くてスタイルの良い女子がいますので…救護所にこの人を連れて行く際に彼女に毛布を創ってくれるようお願いできますでしょうか」
「ああ、あの子だな!分かった!」
「お願いします」
大分HUCも身体が温まったのか、震えが収まった。まだ顔色はそこまで優れないが、シバリングが収まったという事は自分で体温を保てるようになりつつあるという事だ。
念のため、個性でHUCの保温をしておいた。
「頭を揺らさないようお願いします。もしかしたら頭を打っているかも」
「ああ、わかった!残りの傷病者を頼む!」
「お願いします!」
HUCを抱えた彼らを見送り、続いて連れてこられるであろう傷病者への準備をしようとした矢先。
先程彼らが向かった方向から、爆発音と破壊音がした。
「!?」
なんだ?
あれだけ騒がしかった皆も緊張で静まり返っている。
爆発して舞った瓦礫が落ちる音と、『無数の足音』が響く。そこで思い出す。演習の想定内容、『敵による大規模破壊(テロ)』。
まさか―――――
救護所の近くの壁に開けられた大穴から出て来た「彼ら」を認識した。
黒ずくめの群れ。その先頭に佇む白いスーツの男。
「彼」こそがこの仮免試験における―――
「対敵。全てを並行処理…できるかな」
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