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「喧嘩して謹慎〜〜〜!!!!????」
「馬鹿じゃないの……」

翌朝、1-A寮を賑わせた一大ニュース。
なんと、緑谷と爆豪が夜中にガチ戦闘の大喧嘩をして相澤に謹慎を喰らったのだ。
道理で朝の日直の業務を言いつけた相澤の機嫌が悪かったわけだ。元々今日は緑谷が日直だったのに。

「ごめんね栂野さん…日直…」
「いや、それはいいんだけど…怪我は大丈夫なの?」
「あんまりリカバリーガールの個性は使うなって先生が…」

まあ、そうだろうな。頬の腫れは引いているようだが至る所に張られた湿布や包帯が痛々しい。
これを機に多少はお互い歩み寄っていただきたいものだ。特に爆豪。
零仔の視線に気づいたのか、こちらに背中を向けて掃除機をかけていた爆豪が振り返り此方を睨みつけて来た。
朝から実にキレのある良い睨みだ。

「何見てんだロン毛コラ」
「別に?いい面構えになったじゃない、男前よ爆豪君」
「あ゛あ!!?」
「朝から元気ね」
「お前らホントある意味仲いいって言うか似たモン同士だよな……」

朝から元気よく一方的な煽り合い宇宙していると、少し遅れて轟がフロアに降りて来た。
やっぱりというか少し寝過ごしたのだろう。目は少しとろんとして欠伸を噛み殺している。

「おはよう轟君!寝坊だぞ!!」
「おう…」
「夜更かしでもしたん?」
「少しな」

その夜更かしに恐らく零仔が関わっているのだろうと思うと居た堪れなくなる。
仮免試験が終わった昨日の夜、零仔は彼の部屋で話をした。今までの事、これからの事。
そしてお互いへの気持ちを漸く確かめ合えて、一歩踏み出せた。
思いが通じ合うという事は、嬉しいということ以上にとても気持ちが晴れやかで、穏やかだった。
彼の静かな目がゆっくりとこちらを見て、その途端に少しだけ優しい眼差しになるのがわかる。

「…はよ、栂野」
「おはよう轟君。寝坊よ」
「だんだんお前飯田みたいになってきたな」
「どうも。ほら寝癖もついてるし…貴方いつも白い方だけ寝癖つくのね」

なんというか、学業や実技の成績は完璧な彼のこういう所が本当に愛おしくなる。
涼し気でクールだと思われがちな表情が何も考えて無くてぼーっとしている時の顔だったり、俗的なものをほとんど知らなかったり、いつもどこかが抜けてて、見ていて飽きない。
言われて気付いたのか、「マジか」と白い方を手櫛で直しているのも面白い。
だが峰田がこの光景を見てレモンを丸かじりしたような若しくは砂糖を丸飲みしたような顔をしているのも別の意味で面白かった。
何も変わらない。いつものやり取りを、いつものようにできている。いつも通りである事が、こんなにも喜ばしい。
轟も同じ気持ちなのか、その表情がいつもより柔らかいのを零仔だけが知っていた。