1
「本選出場だなんてすごいわ零仔ちゃん」
「すっごいじゃん栂野、殆ど個性も使わずに来てるし!」
「応援しますわ!でもわたくし達もライバル、負けませんわ!」
「う、うん……」
女子群にすごい囲まれている。
これは思いもしなかった。完璧に想定外だ。
ご飯も食べ終わり自分の体調を整えようとした矢先のこれだ。いや、悪くはないし嫌ではないんだけれど如何せんこうして人の輪の中にいるというのは本当に慣れないのだ。
どうにか、どうにか打開策を。
PPPPPPP!PPPPP!
「ん?電話?誰の?」
(しめた!!!私のだ!!!)
「あっ、あ〜私の!私の電話だ!!ちょっとかけてくる!!!!」
最高のタイミングでかかってきた電話にこれ幸いと豪速で控室を出た。
こんな最高のタイミングで電話をかけてくる神は誰だ。
通話ボタンを押す。
「もしもし」
『おっ!!!!繋がったァ!!!!!もしもし!!!!!!!』
「五月ッ蠅ぇ!!!!!」
耳元で突如大声量の暴力。
まずそれにブチ切れさせてもらおう。だが。
その声を、零仔は覚えていた。
「夜嵐君?」
『そうだ!覚えててくれたのか!』
「そりゃあね。聞いたよ、士傑に行ったんだってね。入学の日にいなかったから、先生に聞いた。理由は聞かないわ、そっちにもいろいろあったんでしょう?」
『…ああ!絶対に譲れないものがあった!だから辞退した!!すまん!!ベストを尽くそうって言ったのは俺なのに!!』
「いいよ、士傑ならまた会えるだろうし。それにしても、どうしたの?急に電話なんて」
『ああ、体育祭!今見てるんだ!!』
ああ、それでか。
やっぱり同じヒーロー科だから、勉強というのもあるんだろうか。
TVに映ってるんだなあというのをまじまじと感じて何だか恥ずかしい気分になる。
『本選出場おめでとう!!応援してるぞ!!』
「う、うん。頑張って勝ち進む」
『きっと勝てるはずだ!!アンタなら!『Plus ULTRA』だからな!!!』
ああ、夜嵐は。士傑に入ったけれど、雄英が本当に好きなんだ。
本当なら、ここに夜嵐がいたんだろう。
もしかしたらお互いしのぎを削り合うライバルになっていたかもしれない。
だからこそ。
「夜嵐くんの分まで戦うよ」
『…!ああ!楽しみだ!!!』
「頑張るね」
通話が切れる。
夜嵐に激励され、元気も出た。
色々あったけれど、ここまで来たのだ。勝ち上がる以外手はない。
さて通話も切れたし戻るかと足を進める。
「…」
進める。
「……」
進め……
「………」
進めど進めど目的の場所にはつかない。
(…オッケー、迷ったな?これは)
馬鹿だな?
注意散漫だったからこうなるのだ。馬鹿だとしか言いようがない。
仕方がない、ここからだと外へつながる出口の方が近いはずだ。もう外に出て大人しくウォーミングアップをしよう。
そう決めて出口へと歩みを進めると、その出口の方から微かに話し声が聞こえて来た。
.