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試験開始の合図直後、隣の夜嵐が飛び出した。
彼の身体は地面の抵抗を一切受けず身体が空を舞っている。
(風の個性か…!それもすごく綿密なコントロール!)
勢いよく飛び出したのにこちらへの被害がほとんどなかった事から、凄まじいコントロール力がうかがえる。
その直後、髪が赤と白の半分こになっている少年も前方へと駆け出していく。
夜嵐と少年の2トップ、他がどんどん追い抜かされていく中、零仔も必死に食らいついた。
あの少年は氷をどんどん重ねていくことで自身の身体を前面へと押し出していく。
―――強い。個性慣れしている。
負けてはいられない、こちらも全力で前へ。
個性を使っている面子には劣るが、それでも。
(私は私の全力で合格をもぎ取る!!!!)
行く先々のコースでは所々トラップが仕掛けられていた。
だがすべて機械だ。ならばこちらにも手がある。
機械のアームに飛び移り、その内部温度を上昇させていく。
機械ならば動力部がある。計算通りに動くようになっているのであればその計算を行うブレーンがある。
そのモーターを回転させるためには大きな熱が発生し、その熱を排気、冷却する事で機械は動いている。
ならば個性で一気に高温にしてしまえば最早冷却など機能しない。
行きつく先は暴走だ。
完全に破壊してしまえばあとから来る生徒たちの障害が無くなってしまう。足止めついでだ、暴走した罠は彼らに頑張って抜けてもらおう。
「なんだこりゃーーー!!!!」
「ッ暴走してやがんのか!!!??」
背後から悲鳴と怒号が聞こえる。
試験だから仕方がない、別に零仔は直接妨害をしたわけではないしこちらが切り抜けるために仕方なく暴走させてしまったのだ。壊すという手もあるがそれでは彼らの試験にならないのだから仕方がない。
往く先々の罠を全てちゃっかり暴走させ、零仔は三着でゴールをした。
「ハァ…ハァ……!!」
正直、かなり過酷だった。
個性による補正は罠の無効化以外ほぼなく、ほとんどを自分の身体能力だけで乗り切った。こういう時にああいう派手な個性があると便利だなとつくづく思う。
一着と二着は夜嵐とあの半分少年だろう。
予想通り夜嵐の背中が見えた。
夜嵐がぐるりと突如振り向いて、その眼に零仔を捉えると、ニカッと笑った。
「アンタも到着したんだな!!!!」
「三着だった」
「そっか!!!!あとは面接だけだな!!!!あっ、そうだ!!!!!これ!!!!」
「はっ!?」
突如腕を出され、反射で差し出されたものを慌てて受け取った。
それはメモで、走り書きで英数字の羅列が並んでいた。
「自分の連絡先だ!!!!アンタ三着ってことはすごいんだろう!これも縁だ!!!」
「えっ、あ、待っ」
「じゃ!!!!俺は面接に行く!!!!」
夜嵐はそう言っていってしまった。
名前通り嵐のような男だ。
呆気に取られて、メモを見る。
(……誰かの連絡先貰うの、初めてだな…)
同年代の誰かとこうして話すのも、臆さず話しかけられるのも、対等だったのも初めてだった。
何もかもが初めてだった。
(夜嵐、イナサ)
「20番、面接会場へ案内する」
「は、はい」
呼ばれて慌てて返事をする。
メモをポケットへねじ込み、思考を素早く切り替えた。
もしかしたら。雄英に合格したら、個性以外にも何か変わるかもしれない。
…そんな淡い希望が心に灯りつつあることに嗤いながら、案内された面接の部屋のドアを叩いた。
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