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相澤の話によると、何でも今回のヒーロー名考案の件は、体育祭の裏側で行われていた「プロからのドラフト指名」と関係してくるのだそうだ。
体育祭は生徒達が個性で競い合い高め合う場だけではなく、プロ達がヒーローの卵を見初めに来る所謂スカウトの場でもある。
今回の体育祭を踏まえて一年にも指名が来ているのだ。
だが指名が本格化するのは経験を積み即戦力として判断される2.3年から。
つまり今回来た指名は、将来性に対する「興味」に近いのだ。
裏を返せば卒業までにその興味が削がれてしまえば、一方的にキャンセルされるというのは良くある話だという事。
「頂いた指名がそんまま自身へのハードルになるんですね!」
「そ」
葉隠の言う事はその通りだ。
そしてその使命先の事務所が有名所ならば、さらにハードルは上がるだろう。
「で、その使命の集計結果がこうだ。例年はもっとバラけるんだが…3人に注目が偏った」
「…!」
轟が4123件、爆豪が3556件。
零仔がギリギリ2000行かなかった程度で、その下の常闇から一気に指名数が3桁に低下している。
「1位2位逆転してんじゃん。表彰台で拘束された奴とかビビるもんな…」
「ビビってんじゃねーーーーよプロが!!!」
確かに。
そしてこの爆豪の攻撃的すぎる性格に対して轟の冷静な戦術眼とエンデヴァーの息子だというのがこの指名に繋がったのだろう。
「……それに対してなんで私にもこんなに…」
「栂野さんの個性は強力かつ汎用性が高いですから災害救助で輝くでしょうし、栂野さん自身の戦闘能力も高いですから、プロとしては是非欲しい人材なのでしょう。流石ですわ」
「わあ……」
八百万の説明は実に分かりやすい。
そして納得もいった。
(緑谷君が無いのが意外ね…怖かったのかしら)
あの強力なパワー、もしも零仔がプロならば欲しい所なのだが。
あの戦いは裏事情を知っている者からしたら素晴らしい戦いだったのかもしれないが、何も知らない、しかもプロからすれば煽っといて負けた、という風に見えたのだろう。
バックグラウンドというのは結構大事なもので、そしてそれを踏まえての世論が大衆に知れ渡っていく。
そう考えると、本当にヒーローの強さや本質というのはメディアに左右されていくのだなと感じた。
「これを踏まえ…指名の有無関係なく、所謂職場体験ってのに行ってもらう。おまえらは一足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験して、より実りある訓練をしようってこった」
USJの事だろう。
零仔は気絶してしまっていたが、あの後プロ達が到着していたらしい。
その戦いを見られなかったというのは酷く残念だった。
よく気絶して一部始終を逃すのがお約束になってきている。それはもう流石に学習して無くしていかねばならない。
まあそれは置いておいて、その職場体験の為にヒーロー名考案を授業にいれたのだろう。
A組の盛り上がりは最高潮だ。
「まァ仮ではあるが適当なもんは…「付けたら地獄を見ちゃうよ!!」…」
相澤の声を遮って、ドアがバン!と開き、元気な声が飛び出してくる。
現れたのはミッドナイトだ。
「この時の名が!世に認知されそのままプロ名になってる人、多いからね!!」
「「「ミッドナイト!!!」」」
「まァそういうことだ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうのできん」
(だろうなあ…)
如何にもそういうのは苦手そうだし興味がなさそうだ。
相澤のヒーロー名「イレイザーヘッド」、かなりカッコいい名前だと思うんだが相澤の性格からアレが生まれたとは考えにくい。誰かが付けたんだろうか。
それにしてもヒーロー名を考える、こんな身でもヒーローを志す身で当然避けられない事だが、改めて考えると中々定まらない。
将来自分がどうなるのか、名付ける事でイメージが固まりそこに近づいていく。オールマイトのように、名は体を表すとでもいうべきか。
15分後、大分時間はもらえたがやはり定まらない。
だがここは雄英。何と発表形式だという。
中々度胸がいるだろうにいつもなら積極的なA組でも誰も挙手しようとしない中、切り込んだのはまさかの青山だった。
「行くよ…『輝きヒーロー・I can not stop twinkling.(キラキラが止められないよ☆)』」
「短文!!!!」
「そこはIを取ってCan'tに省略した方が呼びやすい」
「それねマドモアゼル☆」
(ミッドナイト違う、ツッコミどころはそこではない!!もっと根本からツッコめ!!)
零仔のいつもの祖母とのやり取りで培われたツッコミ能力が今ここで開花している。
全く嬉しくない状況で更に切り込んだのは芦戸だ。
全くいい予感がしない中、流石芦戸、期待を裏切らなかった。
「じゃあ次アタシね!!『エイリアンクイーン』!!」
「2!!血が強酸性のアレを目指してるの!?やめときな!!」
(高度な自虐か?)
この流れにより完全に空気は大喜利を求められている。
座布団も舞わぬ大喜利、各々がセンスを求められているのか?良かったな担当が相澤じゃなくて。
流石にこの流れでは誰も出ない。大喜利っぽい空気になってしまったところで完全に皆の手が止まってしまった。
そこで行ったのは我らが蛙吹だった。
「じゃあ次、私いいかしら。小学生の時から決めてたの、『梅雨入りヒーロー・フロッピー』」
「カワイイ!!親しみやすくて良いわ!!皆から愛されるお手本のようなネーミングね!」
(((ありがとう梅雨ちゃん(フロッピー)空気が変わった!!)))
(あ゛〜〜〜〜〜梅雨ちゃんほんと大好き)
蛙吹、心の友よ。
クラスのアイドルは君で決まりだ。
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