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4月。
遂に雄英高校、入学の日だ。
雄英の制服は深緑のラインがいくつも入ったグレーのブレザーに赤いネクタイ、あとはブレザーに入ったラインと同じ色のスカート。
ソックスは黒のハイソックスが基本らしいが、別に規則はないらしいので黒いタイツにした。
朝ごはんを食べ、すぐに玄関まで行くと祖母がいつも通り見送りに来た。
今日から高校生。オニューの制服に身を包んで、気分も真っ新だ。
「…すごく格好いいわ、零仔」
「…ありがと」
「ふふ、行ってらっしゃい。気を付けてね」
心配そうな祖母の表情。
そうだ、これからはヒーローになるための勉強をしていく。実戦や災害救助、こちらも命をかけていくのだ。
だから。
「行ってきます」
乗り越えて見せると、真っ新な表情で言う。
自分との戦いに勝つために。
***
雄英高校の校舎はガラス張りのビルが4つ並んだ形になっており、どの方角から見てもHEROの頭文字である「H」に見えるようになっている。
広大な敷地面積を有しているらしく、町の数割をこの学校の敷地が占めている。さすが国立超名門校。
雄英に到着すると何人も新入生らしき人たちが門を潜っていく。零仔のクラスはA組だ。
ヒーロー科は二クラスあるらしい。別にクラスはどちらでもいいのだが。
玄関に行くと凄まじい部活勧誘にあった。別に部活をするつもりはないから素気無く断り、下駄箱で真っ白な上履きに履き替えると、それなりに広い校舎を少し迷いながら歩き回り、漸くA組に到達した。
(ここが私の新しいクラス)
ドアの前に立つと、中学の時のように自然と表情が死んでいく気がした。
学校とは、零仔にとってはそういうものだった。
…ここには個性の完全なコントロールの為に来ている。個性がある程度コントロールできるようになるまでは人付き合いしていく自信がなかった。
暫くは大人しくしていよう。
そう意を決して扉を開く。
中の生徒たちはもうほぼ集まっていて、一斉にこちらを見ていた。
それを避けるように入ってすぐさま黒板を見る。席順が書いてある筈だ。
零仔は真ん中の列の一番後ろだった。
クラスの雰囲気はまだ真新しく、新しく入って来た人物を観察する事を優先しているようだった。
零仔は自分の雰囲気が近寄りがたいものだという自覚がある。まずは話しかけるというよりも皆様子見に徹しているのだろう。その方がありがたかった。
何よりもそろそろ予鈴が鳴る。
零仔の後にやって来た少年とその後に来た少女が入り口付近で仲良く話している最中。
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ」
冴え冴えとした声が廊下から聞こえた。静かになったクラスメイト達が一斉に下を向いている。
え?何?下になんかいるの?と思ったら、下方から寝袋と一緒にくたびれた黒装束の男がぬらりと起立した。
まさか廊下に寝袋で寝転がっていたわけじゃねえだろうな…と思っているのだが、皆の反応を見るに予想は当たっていると思う。
「静かになるのに8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね。あ、担任の相澤消太だよろしくね」
簡潔かつ無駄のない自己紹介だった。
どうやらあれがこのA組の担任らしい。この学校の教師は全員プロヒーローのようだが、あんなヒーローは見た事がない。
零仔はそこまでヒーローに詳しくはないのだが。
「じゃあ早速だが、この体操服着てグラウンドに出ろ」
……えっと、ガイダンスは?
余りに置いてけぼりの展開だったが、まあ担任の話なので聞くしかない。ガイダンスはどうなるのかさっぱりだが、体操服にさっさと着替えてグラウンドに出る事にした。
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