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「「「「個性把握テストォ!!!!??」」」」
らしい。グラウンドに呼び出されたのはそれだ。
ヒーローになるのに入学式だのガイダンスだの悠長にやっているのは「合理的」ではないらしい。
自由な校風が売りの雄英、教師側も然り。
なんでも相澤は中学までの「個性禁止の体力テスト」の非合理性を嘆いているらしく、まずヒーローへの第一歩として自身の個性の上限を知れ、と言いたいらしい。
まず相澤が指名したのは爆発したような頭の大変目付きの悪い少年だった。
個性を使ったソフトボール投げをするように言う。
爆豪と呼ばれた少年は軽く準備運動をして、
「死ねぇ!!!!!!!!!!!!!」
という大変な暴言と共に遥か天高くまでボールを撃ち出した。
凄まじい音は恐らく爆風。手の平で爆発を起こす個性なのだろう、成程ヒーロー向きの派手な個性だ。
(掛け声が死ねなのはアレだけどな……)
それはその場にいる全員が思っていたらしく何とも言えない表情をしている。
しかし、爆豪の叩き出した705.2mという記録は凄まじい。
「んだこれ!!スゲー『面白そう』!!」
「個性思いっきり使えるんだ!!」
面白そう、という発言に相澤が反応した。
「ヒーローになる為の3年間、そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?……よし、トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し、『除籍処分』としよう」
おいどうしてくれるんだ。
零仔の個性は一切身体強化には使えない。推進力にも使用できない。
推薦試験もほぼ素の身体能力で乗り切ったのに、個性フル仕様の体力テストなど無様な結果にしか終わらない。
(初っ端から試練だな…)
しかしこればかりは本当にどうしようもない。
出来得る限りの事をやり切るしかない。
「生徒の如何は先生の『自由』。ようこそ、これが『雄英高校ヒーロー科』だ」
***
第1種目、50m走の記録、6秒8。
元々身体能力を鍛えていただけあって素の脚力は高いつもりだった。
だが体格のいいメガネの少年の個性はどうも脹脛の排気口からのジェット噴射による高速移動らしく、3秒4というバカみたいな記録を叩き出した。
第2種目、握力の記録、40sw。
握力にはあまり自信がない。
一方恐らくこのクラスの中で最も体格のいい多腕の少年は540kgwという記録だった。
第3種目、立ち幅跳びの記録、2m70p。
かなり自信はあるがやはり推進力のある個性の面々には遠く及ばない。
第4種目、反復横跳び。記録は61回。
これも自信はある。
これに関しては約1名、ブドウのような頭の小さな少年、峰田が突出した記録を持っていた。
第5種目、ボール投げ。
先程爆豪少年がアホみたいな記録を出した種目だったが、なんと麗日と呼ばれていた少女が無重力の個性で∞という目を疑う結果を出していた。
そしてもう一人、地味めなそばかすの少年、緑谷が705.3mという記録を叩き出していたが、その反動で指の骨が折れてしまったらしい。
個性が制御できないのだろう。
一方零仔は47mだった。
残りは持久走、上体起こし、長座体前屈……とまあ、様々な種目があったが。
零仔は突出した記録は出せなかった。
さて、最下位は除籍処分。
間違いなく最下位は――――
クラス全員の視線が零仔へ向かう。
こちらは涼しげな顔をしている中、相澤はこちらへ向かってきた。
「さて、栂野。君は確か特待生だったな」
「はい」
「もう結果は分かっているとは思うが」
「はい。私が最下位ですよね」
「御名答だ」
クラスの空気が一気に冷えていく。
それは憐みだったり、同情だったり。今までに何度も味わった空気だった。
慣れている。だからこそ平静を保てるし、こちらには「焦らない」根拠がまだあった。
「では相澤先生、一つ聞かせてください」
「なんだ。手短にな」
「個性とは身体能力の向上や、移動能力の向上という目的で発揮されるものだけではありません。では、この「体力テスト」で生徒の個性を使用した結果を見て、『見込みなし』とするのは、「合理性に欠く」のではないですか?」
なにも役に立つ個性というのは身体能力向上だけではない。
ただそれだけで、除籍というのは今花を咲かさんとする芽を摘む行為だ。
相澤は暫く黙ったが、フン、と息をついた。
「そうだ。合理性に欠く。洞察力は評価しよう栂野零仔、君の判断は正しい。そうとも、除籍処分はウソな」
「「「「「えっ!!!!????」」」」」
「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」
「「「「はーーーーーーーー!!!!???」」」」
だろうと思ったよ。
「そゆこと。これにて終わりだ、教室にカリキュラムなどの書類あるから目ェ通しとけ。明日からもっと過酷な試練の目白押しだ」
そう言って相澤は去って行ったが、こちらはどっと疲れた。
全く心臓に弱い教師だ。
最下位からのスタートだが、まあ、問題はない。
初日から調子を狂わされたものだが、明日からもっと過酷になる。
気を引き締めなければ。
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