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少し顔を上げれば、赤いキャップが見えた。目に入ったそれに手をのばしかけて、やめる。目を瞑ってはいるが口元には火のついたタバコ、
「起きてるでしょう」
声をかければ、クツクツと喉を鳴らしながら笑う
「眠ってるなんて言ってねェだろ」
意地悪だ、体を起こして赤い法被を投げ返す。おい、咎めるような声が聞こえたが無視して中に引っ込んだ。
取り込んだまま山積みになっている洗濯物をひとつひとつ畳んでいく、男だらけのこの場所は洗濯物の量も多い。あとでベイビーズにでも手伝ってもらおうか、ぶつぶつ言いながら進めていると背後に気配を感じる。
振り向けばしゃがみこんだ左京に頭を掴まれて上を向かされた。
じとりとこちらを見る左京に居心地が悪くなる。
なんですか、そう言いたかったのにそれはぱくりと食べられてしまった。噛みつくように唇を食んだと思えば、侵入した舌が好き勝手に口内を動き回る。苦しくても、抵抗すれば噛まれてしまうのがわかっているので受け入れる他ない。
苦味だけを残して離れていくそれを見ていれば、舌打ちをひとつ
「下手くそだな」
「なら上手な方にお相手を頼んでください」
暇潰しのくせに、そう心の中で呟いて、拗ねるような気持ちを誤魔化すようにそっぽを向いた。
知っているのだ。いくら体に手を這わせようと、幾度となく唇を重ねようとも、彼はわたしを抱かないのだ。それが寂しいだなんて、連れてこられたばかりの頃は思わなかった。
「抱かないんですね」
以前一度だけ聞いたことがある。左京は気だるそうに視線を向けて、鼻で笑った。
「お前抱くほど飢えちゃいねェよ」
あの日から度々、左京が女を抱いている場面に出くわすようになった、気がする。
見せつけるようにキスをして、体を撫で上げて、漏れる甘い嬌声に耐えられなくなって逃げ出す。体に燻る熱を発散できずに泣いた夜だってある。それを知っているくせに、左京は私を抱かない。
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