「第一回」ノゼル・シルヴァ物真似選手権


酒の席で、団員たちはすっかり出来上がっていた。

「なぁ、ジゼル。お前の兄貴の物真似、誰が一番うまいか審査してくれよ!」

「は? なんだよそれ」

「いや、お前の兄貴って相当キャラ濃いだろ? 言い回しとか所作とか独特じゃねぇか?」

「まぁ……それは認めるけど」

「ってことで! ノゼル・シルヴァ物真似選手権、開催〜!!」

\いええええええええい!!!!/

酔った団員たちが大盛り上がりで拍手をする。

「俺、ノゼル団長がジゼルを探してたときのやつやるわ!」

団員Aが、腕を組んで険しい顔を作りながら低い声で言った。

「……どこだ、ジゼル……貴様を、逃がすものか……」

「…………」

「どうだ?」

「うーん、ちょっと語気が弱い。ノゼルならもっとキッパリ断言する。**『ジゼルを逃がすものか』じゃなくて、『ジゼルは逃がさん』って言うな」

「厳しい!!」

「つか、冷静に考えてノゼルに関する知識細かくねぇ?」

「だって兄貴だし」

「そこは普通に言うんだな!?」

「ほら、次!」

「じゃあ俺、ジゼルを家に閉じ込めてたときのノゼルやるわ!」

団員Bがジゼルの肩をガシッと掴み、ゆっくりと低く囁く。

「……お前は外の世界で生きていけない……俺のそばにいろ……」

「やめろ、再現度高くてゾワゾワする」

「減点か!?」

「つか、お前の口調の方がまだ優しい。ノゼルならもっと強い命令形になる」

「なるほど!? つまり『俺のそばにいろ』じゃなくて『俺のそばから離れるな』って感じ?」

「そうそう!」

「お前、兄貴のセリフめっちゃ再現できるな!?」

「ほら、次!」

「お待たせしました!!」

団員Cが髪をかきあげ、冷たい眼差しを作りながら、ノゼル特有の無駄に貴族然とした所作で立ち上がる。

「フッ……黒の軍など、所詮は無法者の巣窟だ」

\おおおおおおおおお!!!/

「おお、これは……!」

「いや、ちょっと待て! お前、手の角度違う! ノゼルならもう少し指先に角度をつける!」

「!?!?!?」

「いや、そこまで細かく見る!?」

「だって兄貴だし」

「ほら、次!」

「じゃあ、最後は俺が!」

ノエルが意気揚々と立ち上がると、周囲の団員たちが期待の眼差しを向ける。

「えっと……お兄様が私に言うときって、こう……」

ノエルは腕を組み、少しだけ視線を伏せながら、ノゼルの口調を真似る。

「ノエル……貴様の実力では、まだまだ未熟だ」

\おおおおおおおおお!!!/

「可愛い!! 合格!!! 100点満点!!!」

「お前、さっきまでやたら厳しかったのに、ノエルだけ甘すぎんだろ!!」

「だってノエル可愛いし!!!」

「結局、お前も兄貴のこと好きなんじゃねぇの?」

「は? どこをどう見たらそうなる?」

「いや、だって手の角度とか語尾の言い回しとか細かく修正してる時点で、お前がノゼルのことめっちゃ観察してるのバレバレなんだが」

「…………」

「ジゼルもジゼルで、ノゼル大好きだよな〜」

「好きじゃねぇよ!!! きっしょいわ!!!!!」

こうして、黒の軍にまた一つ、ジゼルの奇妙な一面が知れ渡ったのであった。


あさぼらけと一等星