「銀の軍・ノゼル視察/襲来の日」


ある日、黒の拠点に緊急の報せが届いた。

「おいジゼル!! 銀の軍が視察に来るらしいぞ!!!」

「……は? なんで?」

「知らねぇよ!! でも、ノゼル団長も来るってさ!!」

ジゼルは思わずコーヒーを吹き出しそうになった。

「ちょ、待て……ノゼルが……ここに……!?」

「なんでそんなに嫌そうなんだよ」

「お前、俺の兄貴の異常性知ってるだろ?」

「……あぁ……うん、まぁ……」

黒の団員たちは顔を見合わせた。

ジゼルの監禁生活や、ノゼルの狂気じみた過保護を知る彼らにとって、それはもはや他人事ではなかった。

「と、とにかく! 今日は身だしなみ整えとけ!!」

「お前らが一番普段通りじゃないと怪しまれるだろうが!!!」

「いや、ジゼルがちゃんとしてないと、まずお前が連れ帰られるんじゃ……?」

「…………」

ジゼルは急いで服を整えた。

逃げる準備は、今からでも遅くない。

ノゼルが黒の拠点に降り立つ
時間になり、黒の拠点に銀の軍の者たちが姿を現した。

ノゼルは堂々とした足取りで進み、鋭い視線を巡らせる。

「…………」

\(黒の団員たち:緊張)/

「うわ、圧がすげぇ……」

「何あの威厳……」

「“銀”って、マジでエリート軍なんだな……」

「ていうか、団長の威圧感エグすぎん?」

「俺、目ぇ合わせたら消されそうな気がする……」

「オイ、俺ら無法者扱いされてるの、余計納得したんだが!?」

ジゼルは、そんな団員たちを尻目に立ち尽くしていた。

ノゼルの視線が、ゆっくりと彼に向けられる。

「……ジゼル」

「…………何」

「思ったよりは……元気そうだな」

「まあね。お前の監禁部屋よりはマシな環境だし」

「…………」

「……冗談、冗談」

ジゼルが肩をすくめると、ノゼルは深いため息をついた。

「……ここでの生活に問題はないのか?」

「うん。問題しかないね」

「ならば、すぐに連れ帰る」

「ちげぇよ!!!」

黒の団員たちは「やっぱりそうなるか」といった表情を浮かべた。

「ちょ、ちょっと待て兄貴!! 俺はちゃんと黒でやってるし、仕事もしてるし……!」

「……“黒”に馴染んでいるということ自体が問題だ」

「お前、俺の仲間たちをどんだけ信用してねぇんだよ」

「事実、お前のいるべき場所はここではない」

「うわ、めっちゃ断言された……」

「というか、なんで急に視察なんか来たんだよ?」

「当然だ。“黒”は秩序に欠ける組織だからな。」

\(黒の団員たち:はぁ!?)/

「おいおいおい、喧嘩売ってんのか、銀の団長さんよ?」

「つーか、こっちのルールに口出ししに来たわけ?」

「いいか、ここは“黒”の拠点だぞ!!」

「騒ぐな」

ノゼルの一喝により、拠点の空気が凍りついた。

「…………」

\(黒の団員たち:しーん……)/

「やっぱ、ノゼル団長こえぇ……」

「威圧感、マジでバグってる……」

「え、ジゼルはこんなやつとずっと一緒に住んでたの?」

「……うん、まぁ」

「よくメンタル持ったな」

「持ってねぇから逃げたんだよ!!!」

団員たちがざわついていると、ノゼルはふとノエルを見やった。

「ノエル」

「は、はい!」

「お前はここで問題なく過ごしているのか?」

「は、はい! ……まぁ、色々とありますけど……」

「この者たちに、無礼を働かれてはいないか?」

「それは大丈夫です! みんな良い人たちですし……!」

\(黒の団員たち:えへへ……)/

「だが、無法者の集まりであることは変わらん」

「それ言うのやめろよ!!」

「せめてオブラートに包め!!!」

「ちょっとは褒めるとかできねぇのかよ!!」

\(黒の団員たち:大ブーイング)/

ノゼルはそれを一切気にせず、冷静な口調で続けた。

「この場の秩序を乱すつもりはない。しかし、ジゼル、お前はいつまでもここにいていいわけではない。」

「…………」

「いつか必ず、帰る時が来る」

「…………はぁ……やっぱ、お前、変わんねぇな」

ジゼルは乾いた笑いを漏らした。

「そんな日、来るわけねぇだろ」

「来るとも。お前がどれだけ否定しようともな」

「……マジで気持ち悪いわ」

\(黒の団員たち:同意)/

こうして、黒の拠点は朝から異様な緊張感に包まれたまま、ノゼルの視察は終わった。

団員たちは口々に「二度と来るな」「もうゴメンだ」と言い合い、ジゼルはぐったりと疲れ果てるのだった。


あさぼらけと一等星