好みのタイプがバレた話
酒の席の話題が次々と変わる中、いつの間にかバネッサがジゼルの隣に座っていた。
「ねえ、ジゼル?」
「ん?」
ジゼルがグラスを口に運びながら目線を向けると、バネッサは微笑を浮かべながら身を寄せた。
「さっきの話だけどさ。アンタ、付き合ってきた女のタイプってどんなのが多かったの?」
「……またその話かよ」
ジゼルは苦笑しながら、視線を泳がせる。
「別に、特別意識して選んでたわけじゃねぇよ。たまたま、そういう女が寄ってきたってだけで──」
「でもさ」
バネッサはくるくるとグラスを回しながら、意味深な笑みを浮かべる。
「共通点あるじゃない?」
「共通点?」
「うん。さっき聞いてると、みんな長い黒髪で、丸くて大きなたれ目、肉感的な体つき……って感じだったでしょ?」
ジゼルは眉をひそめる。
「……まぁ、言われてみれば、そんな気もするが……」
「偶然にしちゃ、できすぎてない?」
「は?」
バネッサは肘をつきながら、ジゼルを覗き込むように笑う。
「よほどお兄さんが嫌いなのねぇ?」
「──ッ!」
ジゼルの肩がびくりと跳ねる。
「……何の話だよ」
「だってそうでしょ? まるっきりノゼルとは正反対の特徴じゃない?」
「…………」
バネッサの言葉に、ジゼルは思わず息を呑んだ。
「ねえ、もしかして──」
バネッサは目を細め、ジゼルの顔をじっと見つめる。
「本当は意識してたから、避けてたんじゃない?」
「──ッ馬鹿言うな!」
ジゼルは勢いよく身を引き、顔を真っ赤にして怒鳴った。
「誰があんなやつ意識するか!!」
「へぇ?」
バネッサはニヤニヤと笑いながら、グラスを口元に運ぶ。
「本当に?」
「本当だ!」
「じゃあなんでそんなに顔真っ赤なの?」
「……っ!」
ジゼルは無言で顔を覆い、グラスの酒を一気に煽る。
──ふざけるな。俺が、ノゼルを意識して?
ありえない。絶対にありえない。
けれど。
少しでも銀髪や切れ長の目、細身の体つきをした相手だと、ふと浮かんでしまう顔があったことも事実で。
──いや、考えるな。考えたら負けだ。
「ま、気づいたか気づいてないかはともかく」
バネッサは肩をすくめて笑う。
「アンタ、結局のところ、お兄さんからは逃げられないってことよ」
ジゼルは何も言い返せず、ただ無言で酒を飲み干した。