悪夢と準備


「あー、そういえば今日ってお前の誕生日でもあったか」

「あれ、兄さん覚えてたの?」

予想外の嬉しさに兄の顔を覗き込む。

「いや、たまたま思い出しただけ」

そう言ってニヤッと不遜な笑みを見せる兄に、がっかりして、なんだ…たまたまかと思わず肩を落とす。


「なにそれ…それなら、たまたま思い出したんだし、ついでにケーキ買ってよー」

「はぁ?あー…早く帰ってこれたらな」

またまた予想外の発言に、嬉しさがこみ上げる。

「じゃあ早く仕事から帰ってきてね」

11月7日…私の20歳の誕生日。

それは、2度と叶わない約束だった。





「…じゃあ、いってくるわ」

「いってらっしゃい!気をつけてね」



思えば、兄がきちんと"いってきます"と言って仕事に行くのは、本当に久しぶりだった。




兄は、予感でもしていたのだろうか。









『あなたのお兄さん…松田陣平さんが、殉職しました』


『……え?』


そんなこと、聞きたくなかった。



白い布から、少しだけはみ出したもの。

手のような形をした、何か。




嘘だ。







じ…るじ…!


「主!!」

「えっ!?」

目の前には見慣れない顔…。昨日から相棒になった鶴丸が、私の顔を覗き込んでいた。

「大丈夫かい?…ひどく魘されていたようだが」

「あ、えと…」

心配そうな顔をした鶴丸の顔を見つめながら、先ほどまでの夢を思い出す。




あの夢は…兄の死を知った時のものだ。


「あなたのお兄さんは、爆破事故で亡くなりました。」

兄の上司だという刑事さんに、いろいろなことを説明されたが、あまり頭には入ってこなかった。

「警察に恨みをもつ者の犯行だとわかっており、数年前の爆破事件との関連性があると思われます。」


そうだ。数年前の爆破事件…!!


「鶴丸!7年前の爆破事件だよ!そこから歴史修正主義者が関わってる可能性がある!」

「お、おお!?どうした!?そうなのか?」

「うん。嫌な夢を見たなって思ったんだけど…意外なところから手がかりが出てきたよ。まずは、7年前の爆破事件から洗い直そう!」

「ああ、わかった!」





もう、大切なものを失いたくない。