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あれから1週間。

まだ慣れない環境の中、私は初めてグール捜査に携わった。

何やら近所で唸り声を聞いた!と言う市民からの情報を基に、六月くんと才子ちゃんと3人で周辺を念入りに調査した。

真相は…
グールではなく、近所を縄張りにしていた野良犬の唸り声…というオチ。

その日はすっかり肩を落としてしまった六月くんを励ましながら、シャトーへと戻り、床に就いた。

…そしてまた翌日、今日は六月くんと一緒に、主治医である柴先生のところへ診察を受けに来ている。

「こんにちは!柴先生」

「お〜、みょうじさん。こんにちは。体の具合はどうかな?」

「んー…今のところ"前みたいな"ことは起きてませんし、至って安定してますよ!」

私がそう伝えると柴先生は、良かった良かった〜と慣れた手つきで袖をまくり、採血を始めた。その後は目にライトを当てたり、聴診器で心臓の音を聴いたり。一通りの検査が終わると"結果はまた佐々木くんに…"と、15分程でその日の診察は終わった。

検査を終え、私が診察室から出ると、すぐ横の廊下で六月くんが待っていてくれた。

「…あ、なまえちゃんっ!お疲れ様。診察どうだった?」

「特に何ともないって!採血の結果はまたハイセさんにーって言われたよ」

「血液検査…うぅ。俺、どうも血とかって苦手で………あっ、なまえちゃんはどう?シャトーでの生活、もうだいぶ慣れた…?」

「うんっ!最初は少し不安だったけど、今はもうなんとか……あっ、でも班長さんとかシラズくんとはあんまり話せてない、かな…」

「そっか…あの二人は単独行動が多くて、先生も手を焼いているみたいなんだよね…俺も何か協力してあげたら良いんだけど…」

「う〜ん…だよねぇ…今のQs班はとてもじゃないけどまとまってるとは……言えないもんねぇ…」

そんな話をしながら私達がトボトボと歩いていると、手前の曲がり角から見慣れた人物が姿を現した。

「先生!」

それは我らが指導者、ハイセさんだった。

「あ、六月くん、なまえちゃん、お疲れ様。柴先生のとこ寄ってきた?」

「あ、はい。俺はまた貧血起こしちゃいましたけど…」

六月くんが苦笑いをしながらそう伝えると、ハイセさんはいつもの様に微笑みながらふと思い立ったように口を開いた。

「そう言えばこの間の捜査どうだった?なまえちゃん初捜査の。あれから何か進展はあったのかな?」

「あ、えっとそれが…――」

私と六月くんは互いに目を合わせ、重い口を開いた。グールの可能性があると調査していた声の正体は、実は野良犬でした…と情けない概要を説明すると、ハイセさんは特に落胆もせず、真剣に話を聞いてくれた。グールじゃなくて良かったね、…なんて、私達を労う言葉まで添えて。

「……あれ、他の二人は?」

「二人は…また単独行動です」

「どうやら"トルソー"について調査しているみたいで」

「ええっ!?」

私がそう伝えると、ハイセさんの表情が見る見るうちに曇り出し、くしゃくしゃと頭を抱え始めた。

「…トルソーを調査しているチームに、捜査資料を貰いに行こう…2人ともついて来て!」

はい!と返事をするよりも先に、ハイセさんは荷物を抱え、トルソーを捜査しているであろうチームの場所へ駆け出して行ってしまった。

…この1週間足らずの生活で、私がすぐさま感じ取ったこと。それは…このチームワークの乱れの根源は、ここにいない問題児2人+αにあるということだ。

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千年続く、幸福を。