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06/04
禪院直毘人の最愛と、その息子
禪院家当主、禪院直毘人には妻がいる。
血を残す為に誂えられた女だ。
直哉という直毘人と同じ術式を継いだ息子も生まれた。
順風満帆だった。


しかし直毘人には忘れられない女がいた。
かつて愛した女だ。
禪院の系譜に辛うじて連なっているだけの呪術師としては三流、いや四流以下の家の出の女だった。
その女は快活に笑う女だった。直毘人が柄にもなく本気で守りたいと思った女だった。
だから妻として迎えることは無かった。この家で大した術式を持たない女がどう扱われるのか、直毘人は誰よりも知っていた。

女との逢瀬を続けていくうちに女に子供が出来た。
愛した女との子供だ。愛おしくないはずもない。
やがて子供が生まれた。女にそっくりの目鼻立ちのはっきりとした赤ん坊だった。可愛い可愛い男の子だった。

赤子は呪霊が見えた。見えてしまった。
そうして直毘人は女とその息子を家に迎え入れることを決めた。息子を呪霊から守るためにもそれが正しいと思う他なかった。
しかし女は反対した。禪院という家を知っているのだ。
女自身のことより息子が虐待紛いの扱いを受けることが許せなかった。
女は告げた。
「貴方とはここでサヨナラです。私とこの子を連れて行く気ならこの子を殺して私も死にます」
女の目は本気だった。直毘人は愛した女を諦めた。息子を手放した。女を愛するが故の判断だった。


月日は流れ、あの時の赤子はもう中学通う年頃になった。母に似た美しい顔立ちのまま、少年期と青年期の堺の妖しげな色香を漂わせている。
この頃過労が祟った母は寝たきりになってしまった。少年が母の面倒を見ながら生活するには余りに苦しかった。
そして女は美しいままこの世を去った。
母に生き写しの美しい息子を残して。



そんな少年に骨抜きにされる禪院家どうですか。
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