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エルフっ子、世にはばかる
「ご馳走さまでした」
ご行儀よく手を合わせた姿はいつもと何も変わらない。
しかし食を任されているサンジの目は誤魔化されなかった。

「シャル、今日のメシは口に合わなかったか?」
1人部屋に戻ったシャルを追い掛け、そう問い掛ける。サンジの声に心配の色が乗っていることに気が付いたシャルは、慌てて頭を振った。
「そんな事ないよ!いつだってサンジが作るものは最高だよ」
「その割にはあまり食ってねえだろ。具合でも悪いのか?」
「ううん、大丈夫。でもこの辺夏島だからちょっとだけバテてるのかも」
そう言って無理して笑う姿を見てサンジは、「ちょっと待ってろ」と言って自分の城へ足を向けた。


「レモンゼリーだ、これなら食えるか?」
差し出されたそれをシャルは礼を言って受け取って、恐る恐る食べ始めた。
「美味しいよ、サンジ」
その取り繕うような言葉と顔にサンジは訝しげにシャルを見た。

「シャル、おれには言いにくいのか?」
「え、なんで?おれどこか変だった?」
「いつもならもっと馬鹿みてえな顔して食ってんだろ」
シャルはサンジの作る料理が大好きだった。いつだって心底幸せだとでも言うような顔をして、嬉しそうに食べるのだ。サンジはそんなシャルの顔を見るのが好きだった。他のクルーも美味しそうに食べるが、ほかの男連中はシャルと違って腹に入れば同じと考えるようなやつばかりで情緒がない。

「さすがサンジ、よく見てるね……」
「んなこたどうでもいい。夏バテならチョッパーを呼ぶが、メシんとき以外は普通にしてただろ」
意外とよく見ているサンジにシャルは閉口する。

そしてたっぷり30秒ほど悩んだあと、決心したかのように口を開いた。


「実は……味を感じられないんだ」


──────

それからゴーイングメリー号はてんやわんやだった。
「ぎづがなぐでごめ゛ん゛」と泣く船医と、「まさかストレスじゃないわよね?」と心配そうに眉をひそめる航海士。
「味がしねェって大変じゃねえか!」とまるで自分がそうなったかのように絶望する船長。
他にも「酒はどうだ?」やら「タバスコ試してみるか?」やら、心配しながらも実験台にしようとしてくるそれらを「やめなさい」と王女が一喝した。

「別に大したことじゃない。おれが知らないだけで、エルフにはよくあることかもしれないし」
エルフ唯一の生き残りであるシャルは、エルフの生態を知らない。教わる前に母も父も全て死んでしまったのだ。

「だけどよお、味がしねェとメシがつれェだろ」
「おれはルフィと違って食欲だけで生きていないから平気だよ。そりゃあサンジのご飯を美味しく食べられないのは残念だけどさ」




◆◇◆◇◆
エルフの発情期
子孫を残すためにエルフは一定の年齢になると発情期を迎える。発情期の第一段階は強烈な飢餓感に襲われ、何を食べても満たされない欲求に苦しめられる。そして第二段階で味覚が一時的に消失する。飢餓感に襲われながら、口にしたもの全て味がしない地獄が待っている。第三段階ではトランス状態になる。強制的に周りの人を襲い、欲求を満たそうとする。
エルフも他の種族同様に他種族との交配が可能である。同族や他種族と性交や体液を摂取することで、発情期の効果を抑えることが出来る。
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