「それでピーター、僕に話って?」
「リリーが例のあの人に捕まってしまったんだ!」
「何だって?!ジェームズはどうした?」
「ひどく取り乱していて、すぐにでも例のあの人の元に飛び出してしまうかもしれない。今みんなで集まっているから、きみにも来て欲しい」
ピーターに呼び出されたヘレンは、リリーが捕まったと聞き目の色を変えた。ジェームズも気が気ではないだろうと心配しながら、ピーターの後を追う。
そして言われるがままポートキーに触れた瞬間───ヘレンの目の前にはヴォルデモートがいた。

「ご機嫌麗しゅう、貴婦人レディ
嘲笑じみたヴォルデモートの言葉に死喰い人たちが、どっと笑う。ピーターは少しの怯えを隠すようにニヤニヤと薄ら笑いを浮かべていた。
ヘレンは一瞬呆けてピーターを見たが、すぐに状況を把握するといつも通りの笑みを浮かべた。ピーターからはさぞ不気味に見えたことだろう。
「やあご機嫌よう、ヴォルデモート」
ヘレンの返事に「無礼者」やらの罵声が飛んできたが、ヴォルデモートはそれを一喝した。
「ヘレン・オルティス、貴様は俺様の妻となり、その力を俺様の為だけに使うのだ」
「それはそれは、ピーターの嘘の次くらいには素敵な・・・ご提案をどうもありがとう。冗談にしては面白くないね」
「そうか。…ときに貴様はセブルス・スネイプと親しいようだな」
「それが何か?それにスネイプとの仲は今はもう昔の話だ」
「俺様も優秀な下僕を殺すのは惜しいが、しかしそれでお前が手に入るのなら安い犠牲だと思わないか?」
「…………ッセブに手を出すな!何が目的だ?」
ヴォルデモートの脅しにヘレンは屈するしか無かった。いくら死喰い人とはいえ、セブルスはヘレンにとって大切な友人であり、学生時代共に研鑽を積んだ仲間だった。ヘレンは我が身可愛さに差し出せるほど、薄情でも冷酷でもない。

「お前と交合うことで魔力が増え、より強力な魔法を使うことが出来る。そうだろう?」
「さあな。だが生憎僕は男だ」
ヘレンの言葉にゲラゲラと品のない笑い声が起こった。
「何がおかしい」
「これはこれは。我が姫君は純真でいらっしゃるようだ」
ヴォルデモートがそう言うとさらに笑い声は大きくなった。
「まあ良い。少しでも俺様に逆らう素振りを見せたら、セブルスとは会えなくなると思え」

1979年──ヘレン・オルティスはヴォルデモートの元に幽閉されることになった。

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