ついに!祓ったれ本舗に春が!?

──今話題の大人気お笑いコンビ「祓ったれ本舗」。

人を傷つけない笑いが流行の昨今の流れとは正反対の毒舌キャラがお茶の間を沸かしている。タイプの異なる二人の整ったルックスも女性人気を得る一助となっていた。

しかしそんな彼らのスキャンダルが報じられたのは20■■年5月。祓ったれ本舗の二人が人気俳優の出水颯と熱烈にキスを交わす写真が週刊文秋に掲載された。記事によれば二人は出水の腰を抱き寄せ、強引に事に及んだと書かれている。出水は先日も、女医であり女優でもある家入硝子との熱愛が報道されたばかりである。デビュー当時から様々な女性との熱愛が報道されてきた出水だが、次の相手は男性となるのだろうか。

この報道に、祓ったれ本舗のファンだけでなく出水颯のファンからも悲しみの声が上がっている。

(中略)

複雑に絡み合った四角関係。出水が手を取るのは五条か、夏油か。それとも家入か。何はともあれ円満に解決することを願うばかりである─────週刊文秋より抜粋。



「何なのマスコミの奴ら暇なの?俺と此奴らの熱愛報道とか誰得だよ」
家入から転送されたネット記事を読み、苛立ちが込み上げるのがわかった。

「今Jugetterで『出水総受』とか『出水愛され』とかで盛り上がってるから、そこそこ需要あるんじゃない?」
「なあ家入、お前も俺と撮られてるって自覚ある?」
他人事のように要らない情報を寄越してくる家入をジトリと睨みつけるも、手をヒラヒラと振られるだけでスルーされた。

「あ、ねえ。コレ見て」
家入が向けてきたスマホの画面を見ると、無駄に上手い絵で俺が悟と傑にセンシティブなことをされている様子が描かれていた。
「態々見せてくんな!何だよ!俺お前になんかしたっけ?」
「私との熱愛報道が秒で終わったのが気に入らない」
「え、お前俺のこと好きなん?」
硝子の言葉にドキリとし、デリカシーもへったくれもなく聞くが「それはない」と一刀両断にされた。

「あんたのせいで私のところに“別れて清々しましたね”、“今回は残念でしたけどもっといい人いますよ”、“颯くんも硝子さんよりあの二人を選ぶなんてセンスがない”等々来てるんだけど。何で私が振られたみたいになってるわけ?」
そう話す硝子の顔にはありありと心底不快ですと書かれている。

「まぁ?俺ってほらモテ男だし?」
「今まで流してきた浮名の九割五分は偶然と誤解でしょ」
硝子の言うことは事実である。 たまたま同じ店で飲んでて店を出たところで撮られてたり、集団で旅行に行ったはずなのに俺と女性タレントだけ切り取られて報道されたり、LINEの誤爆が流出したり。

「いや待て。残りの五分は何だよ」
「クズ共」
無い。絶対無い。

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「颯にキスして俺達のこと意識してくれたと思う?」
「思わないかな。それくらいで颯の意識が変わるなら私達も苦労しないよ」
「次はどうする?ホテルにでも連れ込んでみる?」
「七海が黙ってないだろうね」

そう話す祓ったれ本舗の二人を見て、思わず溜め息が零れた。私の元に出水さんのマネージャーの七海さんから苦情が届いているのだ。

「伊地知ー!次颯との仕事いつー?」
「来週入ってたのですが、先程七海さんからキャンセルの連絡がありました」
恐る恐る伝えると、二人からギロリと鋭い視線が飛んできた。
「そういうのをどうにかするのが伊地知の仕事だろ!」 「忙しい中颯との仕事だけが癒しだったのに」
直接的に文句を言う五条さんに対し、間接的に不満をアピールする夏油さん。ああ胃が痛い。

「そういえば出水さんと伏黒くんのドラマのゲストとしてお声が掛かってますが、どうしますか?」
確か以前聞いた時は「颯と主演とかずるい、絶対出てやらない」「やるなら颯の恋人と浮気する役より颯の恋人役がいいかな」などと言って断られたが。

「何それ!やる」
「私も」
「あの…お二人のうちどちらかになります」
そう言うと二人は口喧嘩を始めた。初めの頃は震えて見ていたが、今では慣れたものだ。何せ彼らが喧嘩することは珍しくもないのだ。やれ自分の方が颯に好かれているだの、抜け駆けしてんじゃねえだのと喧嘩の原因の多くを出水さんが占めている。

この状態では仕事を受けることも出来ず、保留の連絡を入れた。

数日後、爽やかな顔で「俺がやる」と五条さんから申し出があったが、もう既にその役は埋まってしまっていた。それを伝えると目に見えて機嫌を悪くした。
「誰がやんの?」
誰がやろうともより不機嫌になるのは分かりきっているが、今回は特に相手が不味かった。
「…伏黒甚爾さんです」
「あ゛ぁ?」
ヒィィと喉から悲鳴が漏れる。この時の五条さんは視線だけで人を殺せるほど凶悪な顔をしていた。

ちなみに夏油さんは 「え、キャスティングだけ見ると自分の恋人を寝取った相手(伏黒甚爾)の息子(伏黒恵)とのラブストーリーだけど監督頭沸いていない?」 と話していたが、口をへの字に曲げていたことから伏黒さんが羨ましいのだろう。

後日、“祓ったれ本舗”としてそのドラマにゲスト出演出来ることになった。監督が二人のファンらしい。そして七海さんからは「なるべく颯さんに近付けるな」とのお達しが届いた。彼も彼で苦労しているのだろう。



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──恋人に浮気され失意のどん底にいたハルは、ふと訪れた海沿いの街で一人の少年に出会う。少年ケイは数年前にこの街に引っ越してきたが、馴染めずにいた。

ハルとケイは互いに交流を重ね、やがて惹かれ合っていく。 だが性別、年齢など彼らの恋を阻む壁は少なくない。

彼らの行く末はどうなるのか。 この冬、甘く切ない二人の恋が始まる──

主演:出水颯・伏黒恵

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人気バラエティ番組【祓本の話題のお客様】 毎回、話題になっている人をゲストに呼び、祓本の二人がゲストを弄りまくる番組である。

その日のゲストは、出水颯と伏黒恵であった。 そして出水を取り合う三人のバトルが『神回』としてネットを騒がせている。

『キスシーンの話で五条が「俺もしたい」って叫んだあと出水が「文秋!」て突っ込むのめっちゃ笑った』 『お父さんの前でキスした恵くん可哀想で可愛い』 『傑が颯見る目が優し過ぎて変な声漏れた』 『あの四人の中で一番大人なの恵くんとか頭おかしい(褒めてる)』 『五条が出水に触れようとした時に恵くんが庇って「ハルさんは俺の恋人なんで」って言うのヤバすぎる』

番組を見たファンからは彼らの出演するドラマへの期待の声が上がっている。




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