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この世には必要悪というものがある。

本来であれば存在してはいけないのが悪だが、それがあることによって他の悪を抑制する働きをもつ。



遡ること時は大正。
文明が花開き、外つ国の文化が入り交じった日本ではある薬物が蔓延っていた。
──「屍草」

それを吸うと天にも昇る気持ちになり、酩酊状態に陥る。そして段々とまやかしと現実の境界線が曖昧になり、やがて死に至る薬物だ。
アヘンのような中毒性があるが、一つ異なるのはその死体である。
屍草はその死体から生えてくるのだ。死体から大量に発生し、胞子を撒き散らす。そしてそれを吸った人も屍草の中毒症状を引き起こす。このように連鎖していき、屍草は甚大な被害をもたらした。日本政府はその統制に頭を悩ませていた。

元々屍草は日本に存在しない植物だった。
しかし戦後、強国として名を馳せるようになった日本へ米国より運び込まれた。しかし経路も不明であり、元々米国に強く出られない日本政府は表沙汰に規制することができない状況下におかれていた。

そこで政府が頼ったのは日本の暗部を牛耳るとある組織である。彼らの成すことは秘密裏に処理され、決して表に出ることは無い。彼らは独自の規律を持ち、彼らを裁くものは何も無い。
その組織の通称は「刑吏」。
御伽噺のように悪い事をした子供に刑吏が来るぞと言い聞かせることもあるが、実態は何一つ明らかになっていない。

そして日本政府は刑吏に屍草の撲滅を依頼した。

これはそんな物語である。