かみさま、きいて
「もう夏ね」
やけに照りつける初夏の日射しの中、彼女は私に微笑む。私はそれに頷き、注文したフラペチーノたるものをストローでかき混ぜ、しゃりしゃりと氷の粒を溶かした。
季節を早まりすぎたかと思ったが、この選択は間違っていなかったようだ。昼中は暑くて困る。もっといい日焼け止めでも付けてくるべきだったか。
私は彼女の話に耳を傾け、時折相槌を交えながら続きを促す。
彼女を取り巻く面子は愉快で楽しそうだ。私もそこに初めからいたのなら、もっと鮮やかな青春を謳歌できたのだろうか。きっと違う。私はそんな出来た人間じゃない。
今も顔と名前、それから彼女から見た性格しか知らない男共に密かに嫉妬の念を燃やしている。馬鹿馬鹿しいのは分かっている。けれど理屈ではない。なんとなく、許せなかった。
「勉強なんてしたくない。ずっとリコと遊んでられたらなぁ」
「馬鹿言わないの」
「リコは頭がいいからそんな風に言えるのよ」
彼女は私とは比べ物にならないほど賢かった。私は女だから彼女を溺愛するお父さんにも何も言われずにテスト前は彼女の部屋に堂々と居座れた。
彼女の隣は、ほんとうに心地好かった。ずっと側に居たいと思った。
これを恋などと呼ぶにはお粗末すぎた。不確かなくせに、やけに薄汚い。
せりあがる火照った感情を氷の粒で宥めて、また彼女の話聞いて密かに落ち込むのだ。とんだ自傷行為だ。
「暑いわねぇ、飲み終わったら涼しいところ行きましょうか」
「……ん」
からんと音がして、リコがグラスを可愛らしいコースターに置いたのが分かった。私はすこし考えて、リコにグラスを差し出す。
「飲む? 冷たいから丁度いいよ」
「いいの?」
「うん、どうぞ」
彼女の唇を目で追う。ああ、確かに触れた。
違うの。邪な考えはないの。――そんなの嘘だ。
告白したいとは思わないし、懺悔なんてもっとしたくない。したくはないけれど、誰かにこのやり場のない想いを聞いて欲しいと願うのは駄目なことなのだろうか。
私はまだ、彼女の友達でいたい。離れなくない。賢い彼女に微塵も気持ちに悟られることなく。
かみさま、どうか。どうか聞いて。私のどうしようもない願いを。
/20140702
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