▼ 最後は殺す
彼は、男子にしては華奢な白い手を見つめている。その虚ろな目が、こちらへと向いた。
背中に冷たい汗が流れる。
「ね、矢巾ちゃん。どんなに女の子に似せたって、どう足掻いたって、俺は男なわけで」
「……おう」
「最後までずっと幸せには過ごせないでしょ。でも途中で手放すなんて出来ないし。心移りされたら多分殺しちゃうし。かと言って先行くのも、取り残されるのも嫌だし。俺が死ぬか、殺すか選ばないと」
「誰かが確実に死ぬんだな」
「うーん、困った」
「……てかさ。お前、本当にできんの」
「できるよ。冗談なんて言わないよ。無関係な人も、あのふたりも、もちろん俺自身も……俺は殺せる」
そう言って彼は、そっと微笑むのだ。純真そうな瞳にうっすらと狂気を浮かべて目を眇める。
「だからね、矢巾ちゃん」
「……?」
「ちゃんと、俺 だ け が頭がおかしかったって、証言してね」
俺が頷けば、彼はとろけるような笑顔で笑う。
何が正しくて違うのか、もう分からないところまで来ている。
2016/01/15
2016/08/14
←:back:→