| そうしてレプリカが嗤った |
彼は貫通したばかりのピアスホールに、その形の良い指先を添えて笑った。
これはいくつめの穴だろうか。数えることをいつしか忘れてしまっていた。目視出来る限りでは、ななつ。まだあどけなさの残る顔の隣で小さく煌めいている。
なんだか鍔本周にはひどく不釣り合いだと思った。
「うわ、痛そう」
「穴開けて痛くないわけないじゃないですか」
「だよなぁ」
素直な感想を漏らせば、尤もな答えが返ってくる。
この穴は他人には推し量ることの出来ない繊細な理由で増え続けているわけではない、らしい。あくまで本人の言葉を信じるのならそうなのだろう。本当のところは分からない。
「ねえ、なんでなんでまた開けたの。前これで最後にするって言ったじゃん」
「……怒ってます?」
「怒ってない。てか、俺が質問してるんだけど」
「すみません」
色素の薄い瞳が揺れた。珍しく動揺しているというか、困惑しているというか。
もしかして俺、まずいこと言った?
「太刀川さん、今度こそ怒らないでくださいね」
「ん? お前に怒ることなんてそうないだろ」
「たしかにそうかも」
こわばっていた表情が柔らかくなって一安心する。また指先が耳へと伸びる。目で辿れば、行き着いた先は初めて彼の耳たぶを貫通した場所だった。
右の耳たぶ、真ん中より少し下。最初は俺が開けた。コンマ数秒で薄い肉に穴が開いたのを、はっきり覚えている。
それ以降は彼自身が開けたり俺が開けたりまちまちだ。気づけばこんなに増えていた。
「……ハマった、って言ったらどうします?」
挑発的な視線がすうっと細められて、唇が綺麗な笑みを作った。
最初の理由なんて忘れちゃいました、とあっけらかんと笑う周にこちらも応戦する。
「俺が責任、取らないとな」
「ん、取ってください」
拗れたこの関係に今更何かしようとは思わないけれど、離れられない理由だけがまた一つ堆積した。伸ばされた腕を引き寄せて、顔をぐっと近づける。吐息がかかってくすぐったい。
顔の近くで煌めくそれが、今初めてかちりと嵌った気がした。
2015/06/07
レプリカ先生とは一切関係ございません
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