ジェノスが久しぶりのメンテナンスで家を留守にした日、俺は内心でよろこんでいた。このところ、ひとりになる機会があまりなかったからだ。とは言っても、家を出ればひとりになれたし、ちょっと外してろとでも言えばジェノスはきっと数時間は帰ってこない。けどそういったジェノスからむりに離れた形ではだめなのだ。こっからこの期間は絶対に帰ってこない、絶対にひとり、と約束された状態じゃないとできないことが、まぁ、ある。
家事もパトロールも夕飯も風呂も済ませて、今日、やることはあとひとつ。
どうせ脱ぐから、と風呂上がりの格好のまま、服は着なかった。隙間をあけた窓から入ってきたぬるい風が裸の身体を撫でていく。うっすらと部屋を照らす月明かりに、一対の眼差しを思い出して、ぞくりと震えが走った。
布団の上にバスタオルを敷いて、収納の奥に隠しておいた紙袋を取り出す。これを取り出すのは実にひと月ぶりだ。怪人と戦ってもこのところ身体を壊さなかったジェノスが今日は定期メンテナンスで三日間帰ってこない。いつもは一日もあれば事足りるようだが、確か今回は身体の点検と一緒に新しいパーツを取り付けてもらうから日数がどーとかこーとか言ってたな。
紙袋を床に置くとゴト、と重い音がした。
袋の中には、更に一回り小さい紙袋が入っていて、折り曲げた口を開いて手探りにバイブとローションを取り出す。アナル用のバイブにはぼこぼことした突起がいくつもついていて、コンドームを被せるのが少し難しい。最初のうちはよく破いてしまっていた。
手のひらにぶちゅりとローションを出して塗り広げるとじんわりと温かさが広がってくる。お気に入りの温感ローションはおもちゃにつけて中に入れるとまるでほんものを挿れられている気分になるのだ。ほんものなんて挿れられたことないから想像でしかないけど。
濡らした指で穴を擦ると慣れた身体はそれだけで興奮を覚えて奥を疼かせる。
つぷ、と中指を入れてまずはゆっくりと出し入れをする。
「んっ、んぅ」
久しぶりに胎内に感じる指の感触は簡単に俺の欲に火をつけた。
期待して硬くなっていたちんぽがゆるく勃起する。
「ぁ、あっ、は、んっあぁ」
ローションにまみれた指を動かすたびにくちゅくちゅと濡れた音が立つ。まだ決定的なきもちよさはないけど、こうして出し入れしていると、自分の指でしているのに、むらむらと煽られてしまう。
何度も抜き差ししているとアナルの奥が物足りなそうにきゅんと疼いて、勃起したちんぽに先走りが滲んだ。
「は、ぁ、あっ」
きもちい。きもちいい。
頭のなかがぼんやりとしはじめて、俺は、目を瞑って、ジェノスを思い浮かべた。
俺を見るとやわらかくなるジェノスの眼差し。俺に対しては優しくなる声色。
俺だけに向けられるジェノスからの「特別」を思い出し、やわらかな眼差しと優しい声で「先生」と呼んでもらう。
きもちい、きもちい、きもちい。
好き、ジェノス。
いろいろとむなしい日々のなかに突然あらわれたジェノスは、これまでの人生で誰もくれなかった言葉を俺にくれて、俺にだけはいつも優しくて、誰かから向けられる「特別」という感情に慣れてない俺は不意打ちを食らってそのままばたんとやられた。
ジェノスだけが俺を慕ってくれて、ジェノスだけが優しくしてくれて、ジェノスだけが一緒にいてくれるから、いつのまにか俺にはジェノスだけしかいなくなってたのだ。
ジェノスを好きだと気づいてからはふたりだけで暮らしていけるこの環境をありがたく思ったけれど、ある日、夢を見てからそれも素直に喜べなくなってしまった。
その夢は、自分の中に潜んでいた欲望だったんだろう。夢のなかで俺は、ジェノスとエロいことをしていた。
ジェノスが俺のちんぽを舐めたり、しごいたりしていて、俺もジェノスのをくわえたり、なんかいろいろしていた。
目が覚めるとパンツが濡れていて、夢精なんて久々にしたし、そもそも長らく味わっていなかったそういう類いの欲に俺は動揺した。
好きの延長には確かにそういうことが待っているけれど、ジェノスがサイボーグってこともあるし、身体の違いから考えたことがなかった。けど、一度意識してしまえば、純粋に、弟子として俺を慕ってくれているジェノスのことをエロい目で見てしまって、あんな夢、忘れなくちゃいけないとわかってるのに、俺は夢でしていたことが忘れられず、ジェノスを想いながらオナニーをした。しかもそれがめちゃくちゃ気持ちよくて、一回やってからクセになったように何度もしてしまった。いろんな想像をしたけれど、そのうち、ジェノスに抱かれる想像をするのが一ばんよくて、自分でアナルを弄りながらちんぽをしごいたり、それだけじゃ足りなくなって玩具をいれたり、想像のなかのジェノスとえっちなことをするたび、現実のジェノスに申し訳なくて、恥ずかしくて、態度がぎこちなくなっていった。
気づかれないよう注意しているつもりだったが、このところジェノスは、俺の態度になにかを感じているようだ。いまははぐらかされてくれてるけど、きっとそのうち俺の気持ちだってバレてしまうだろう。だって最近は、ジェノスが隣にいるだけで、ドキドキしてむらむらしてくる始末だし。
これまで芽生えてこなかった俺のなかの欲がジェノスひとりに向かっているのだから、そりゃ、行動も不自然になる。
そしたらジェノスのことだから、何かがおかしい、理由は、原因は、と俺の秘密を暴こうとするに違いない。そうなったら、このはりぼてみたいな師弟関係もおしまいだ。
考えるとかなしくなって、そのぶん俺は想像のなかのジェノスに甘えた。
瞼の裏に思い描いたジェノスが優しく微笑む。俺のなかに埋められたジェノスの指はゆっくりと抜き差しされて、慣れてくると、だんだんとスピードが速まる。
「先生の中、ぐねぐねしてて柔らかい。俺の指に絡みついてきますよ」
耳元で囁かれて、ジェノスの硬い指がずッずッと何度も前立腺を突き上げる。
そのうち指は、一本、また一本と増やされて温かいローションで潤ったアナルはジェノスが指を動かすたびにいやらしい音を響かせた。
くちゅっくちゅ、ぐちゅっ、ぐちゅっぐぢゅっぢゅっ
指を根本まで挿れられ、三本の指をひとつにまとめてぐりぐりと奥を抉られる。
触られているのはアナルだけなのに、亀頭の先にまできもちよさが伝わりじゅわ、とひっきりなしに先走りがこぼれて竿を濡らしている。
ジェノスがいつもより低い声で笑った。
「先生、もう指なんかじゃ足りないんじゃないですか? もっと太くておっきいやつ、挿れてほしいって、奥がきゅんきゅんしてますよ」
「ん〜っ、んぁ、あっアァッ!」
心の中で何度も「ほしい」「もういれて」と訴えるとジェノスが微笑む。「仕方がないですね」と欲にまみれたどうしようもない俺を優しい声が宥めるように追い詰めるのだ。
布団に寝転び、ジェノスに見せつけるよう大きく脚を開いて腰を持ち上げた。
「はしたない人だ」とジェノスが小さく笑い俺は嬉しくなる。
握ったバイブの先を濡れたアナルにずぷ、ずぷ、と飲み込ませる。ジェノスのが入ってくる、と想像するとたまらないきもちよさと充実感に襲われ、ひくひくとアナルが収縮し、バイブについた突起が前立腺を刺激する。その度にちんぽがびくびくと反応してイったみたいにきもちいい。
もう、半分くらい、なかに入ったかな。
残りを中に挿れやすいように、ジェノスが俺の尻を割り開いて、ぐぱっとアナルを晒した。
「ほら、先生がほしがってたやつ、奥まで挿れてあげますから」
ずっ、ずぷ、ずちゅん!!
「〜〜あ あ アァぁぁッ! ひ、ぁ、あっ!」
ずっぷりとハメられたちんぽで奥までいっぱいにされると、声を抑えるなんてことはとてもできず、開いた口からはひっきりなしに喘ぎ声が溢れた。
「は、ンぅッ、ぁ、ちんぽ、あッ、はいってるッあ、アっ、くるし、んっ、んっ……!」
「サイタマ先生っ、先生はもう、前立腺より、奥、ぐりぐりされる方が好きですよね? こうやって」
ジェノスがゆるやかな動きで中を揺すってくる。その度におっきいちんぽの先っぽが奥をごつごつ突いてきて腹筋がひくついた。
「でもえっちな先生は、こんな刺激だけじゃもう足りませんよね」
バイブのスイッチをいれると鈍い稼働音と共に中がぐりぐりと大きく擦れらる。
「んぁぁあぁっ! あっ、あっ、あっ! ちんぽっ、きもちぃ! あっ、奥、おぐッぐりぐり、すごぃっ! はぁ、ア"ぁッ!」
「はぁっ、俺もきもちいです。先生のなか、きもちい。もっと動いてもいいですか?」
「あっ、すきっ! すき、きもちぃッ、もっと、もっとしてっ、おく、ごちゅごちゅっ、ん"っ、いっぱいしてッ!」
「俺も好きです、先生のこと、好きです! 先生が好きなやつ、いっぱいしてあげますからっ」
ジェノスの言葉に合わせてバイブをぐちゅぐちゅ出し入れしながら、つんと尖った乳首に手を這わせた。硬くなった乳首を摘まんで、引っ張りながらぐりぐりと捏ねたり、ぎゅうっと痛いくらい押し潰す。あの優しいジェノスの指が乱暴に俺をなぶっていると思うと、思考がくらくらと靄がかって、口の端からよだれがこぼれた。
きもちい。ほんとうにジェノスとセックスしてるみたい。
ジェノスでオナニーしてるだけでも罪悪感がすごいから、名前を呼ぶのは想像のなかだけにしている。そのぶん好きだと口にすると、自分でもわかるくらいアナルがぎゅーっと締まってバイブを締め付けてしまう。
「ふ、ぅあっ、あっ、んあっ、すき、しゅきっ!アァッ、せっくす、きもちぃっ」
「はぁっ、もう、先生の中に出してもいいですか?」
「あっ、なか、だしてっ、ぉ、おれのっなかっ、なかに出してっすき、すきっ、だいすきぃっ! はぁ、ん、せいえき、いっぱいちょうだいっ! ぃっ、〜っあ ぁ ぁあ"ぁッ!」
ビクンっビク、ビュルゥッ
触れていないちんぽから精液が噴き出してそれがとろとろと竿を伝っていく。
スイッチが入ったままのバイブは俺がイっても容赦なくぐねぐねと暴れまわって息つく暇も与えられない。
「あっ、や、まってっ、まっでぇ、ぃ、いま、イってるから、ぁ、あ"っ、も、だめっ!」
敏感になった身体に与えられる快感はきついくらいで、でも想像のなかのジェノスは優しく笑って俺の中をいたぶり続ける。
そうすると、自分できもちよくなってるだけなのに、ジェノスに意地悪されてるみたいで意識がますますとろけて、もうきもちよくなることしか考えられない。
紙袋のなかにはこのバイブ以外にもまだまだおもちゃが入っている。ジェノスが帰ってくるまでの間、ほんとうのジェノスが絶対にしてくれないやり方で、想像のなかのジェノスにいっぱい気持ちよくしてもらうのだ。
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