ひとりにしないで
いつもと同じように学校から帰る。
いつもと違うのはふたりの距離感。手を繋ぐか、お互いの体の一部が当たった状態で帰るのが、今日はなぜか不思議な程に距離が空いている。そもそも今日心からの笑顔を見ていない気がする。なんだか嫌な予感。
公平くんがため息をついて、少し息を吸ってから話し始める。
「おれら、別れよう」
「え?」
「正直気持ち冷めてるなって思ってる」
唐突すぎて、どうしたらいいか分からない。
昨日まで仲良くゲームをしたり、お姫さま抱っこをしてもらったり、しあわせをたくさんもらっていたから。
何がダメだったのか全く想像がつかない。甘えすぎてたり、頼りすぎてたりしたところがダメだったのかな。
「私と、別れたいの、」
「まぁ、そういうこと」
「もう一回すきにさせるから、すきじゃなくても付き合ってよ……」
「無理かな」
公平くんの顔がいつも私に向けてくれる顔ではなくて、ああもう本当に終わりなんだ、と。
公平くん以外と付き合う未来を全く考えられないほどに公平くんのことがすきで。公平くんともっといろんなところに行って、もっとおいしいものをたくさん食べて、もっと一緒にしあわせな時間を積み上げたいのに。そう思ってるのは私だけ。
どこを直したら公平くんはまた私のことをすきになってくれるのかな。なんて思うけど、早く別れることを了承してほしそうな顔をしている公平くんを見たら、もう無理なんだろうなと悟る。
私がそうだね、別れよっかと言えば全てが終わる。でも終わらせたくなくて、少しでもと口を開くのをためらってた時。
公平くんの「なまえちゃん!なまえちゃん!!」という声が聞こえて、ぱちりと目が覚める。
どうやら教室の机で寝ていたみたい。そうだった、公平くんの用事を待つために教室で待っていたんだった。
ということは、さっきの別れ話は夢ということで。
よかったと思うと同時に、夢で見るというのは実は別れたがっているのでは?と思う。けど、心配そうに私の顔を覗き込む公平くんの顔は、私のことがだいすきな顔をしていて安心する。目から私のことがすきだという気持ちが溢れている顔を見ると、別れるなんて絶対に考えてないなと思える。それに、肩公平くんのジャケットの重みがして、むしろ愛されてるじゃんと思わされる。
「うなされてたけど、大丈夫か?」
「ちょっといやな夢見たの。でももう大丈夫だよ」
「何の夢だったんだ?」
「んー、公平くんに別れよって言われる夢」
本当のこと言ったら悲しませちゃうかなとか考えるような距離感のある関係じゃないから事実を伝えるんだけど、想像通り眉をしかめる。
「信じたわけじゃないよな?」
「当たり前じゃん、私が公平くんのことをすきなように、公平くんも私のことすきでしょ」
「また嫌な夢見たら言えよ。俺がその夢忘れさせるから」
「ありがと、だいすき」
「俺も。じゃ帰ろうぜ」
差し出される手。絶対に別れるつもりはないよという考えを込めて、私よりほんの少しだけ温かい手をいつもより強くぎゅっと握ると、強く握り返される。
言わなくても考えてる事が伝わる関係にもうなってる。
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