00.思いたった話をさせて

個性と呼ばれる超常が日常のこの世界。

不幸体質という言葉をご存知でしょうか?

読んで字のごとく不幸な体質の事です。
簡潔に説明すれば、広狭大小関わらず他人の不幸を自身に引き寄せてしまう体質の事です。

個性じゃないの?と思われた方、実は違うんです。なんでかって?

理由は簡単、私には双子の兄には少し劣るけれど、「爆破」という立派な個性が発現してるんです。

個性は一人一つ。周りのみんなもそうです。

なので、私のこの不幸体質はあくまでも体質なんです。

さて、ここまで長々とこの忌々しい体質の説明をしてきましたが、ここから先は私がこの体質に気づいたお話をしたいと思います。

私、爆豪光はとある平凡な一家に生まれました。稀な男女の双子の片割れとして。
双子の兄は勝己と言います。
この世に生を受けた時からの仲で、文字通り片割れな訳ですが、成長するにつれ無邪気に邪気の塊になっていくのです。

まあ、飲み干した哺乳瓶をこちらに寄越すような男です。片鱗は顕著に現れていたのですが、本当に救えないなあ、と思ったのは幼馴染に対しての態度。
緑谷出久という同い年の男の子で、両頬に点在するそばかすが可愛らしい優しい子。
父に似た気の弱い私を置いていくことなく手を引いてくれる私のヒーローのような人。
そんな彼が私は大好きでした。
いずくんなんて呼びながらいつも手を繋いでいたのが懐かしいです。
あんな菩薩のようないずくんを、当然のように格下と決めつけ扱い、個性が出なかった彼を慰めるでもなく、木偶の坊から文字った「デク」なんて言う酷いあだ名をつけて、ボコボコにしたのです。

ボロボロになって大の字で倒れ込むいずくんに駆け寄ろうとした時、勝己は私の腕を引いて止めました。

「離してよお、いずくんが可哀想だよ。」

「デクなんかほっとけ!帰るぞ。」

そう言って凄む勝己に私の口は閉じてしまって、頭の中には言いたい事が山ほど溢れていたのに黙ってついて行くしかありませんでした。

会う度に同じような展開になるのに、いずくんは勝己と遊ぶのをやめないし、それどころか川に転げ落ちた勝己に手を差し伸べる始末。
その行動に勝己は大激怒。私も遠目で見ながら「ああ、あの手は誰にでも差し伸べられるのか…。」なんて一人ショックを受けたりもしました。

その翌日、私は一ヶ月誘拐されます。

と言っても、誘拐される前と最中、そしてその後の記憶が曖昧なせいで他人事なのですが、勝己の話では、一緒にお使いに行った帰り道で口喧嘩をして、私を置いて先に帰ったらそれきり帰って来なかった。らしいです。

私の覚えている事は、目が覚めたら見知らぬ天井で、横を見上げたら安心して泣き出す母が抱きついてきた事、父が「助けてやれなくてごめんな」と言って泣きながら頭を撫でてくれた事、勝己が不甲斐なそうに私を睨みつけていた事です。

その後警察の人に事情聴取をされたり、体に異変は無いか検査されたりしたけれど、記憶の混濁と右眼の色素が抜けた事以外に特に異常はありませんでした。

ですが一つ、ここで私は気づくのです。

自分の不甲斐なさや不注意で、大切な人達を悲しませる。その事が私にとっての“不幸”なのだと。

その日を境に私は進んで他人が喜ぶような行動を取り続けます。
それらは勝己曰く「目障りな媚び売り」らしいのですが、他人が悲しんだり辛い思いをするよりは、私がそれを代わってあげたい。誰かに言われたからじゃない、他でもない私がそう思うからやっているのです。
さすがに勝己にウザがられるので度を越した事は控えていたけれど、行動し続けると環境が変わるようで、気付けば私は本当に不幸体質になっていました。

小さいもので言えば、棚の角に小指をぶつけそうな人に声をかけて回避させた直後に棚の角に小指をぶつけるなんていう不注意っぽい物だったり、大きいもので言えば、信号無視した子供を轢きそうになった車がハンドルを切って突っ込んで来るみたいなThe不運みたいな事だったり、個性事故に巻き込まれるなんてもう日常だし、イベント事での雨女みたいな悪天候を連れてくるみたいな事もありました。(気づいてからはズル休みしてます。)

そんなこんなで自称不幸体質な私ですが、些細な個性事故や小さなものなら隠せても、大きな事故や周りを巻き込む個性事故は隠せません。

そしてそれは私の身近に居るこの世で一番大切な人達を不幸にしてしまう。
それでは本末転倒です。

そこで私は、中学受験を決意します。