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『メリークリスマス』
「……メリークリスマス」

 たった今宅配便で受け取った薔薇の花束を抱きながら電話をかけると、彼は開口一番そう祝った。

『サンタさんからのプレゼントはお気に召しましたか?』
「うん、とっても。いつもありがとう」
『やっぱ変な感じだよな。クリスマスにお前と一緒にいないってのも』
「そうだね、……パーティーやら冬合宿やらで、何だかんだ一緒に過ごした時期が長かったもんね」

『お前からのプレゼントも届いてる』
「うん。……ねえ、去年も言ったけど、無理して送らなくていいんだよ。もう離れたところにいるんだし、あなたも忙しいだろうし」
『バーカ』

 バカとはなんだ、バカとは。

『誰かが誰かにとってのサンタさんで、俺もお前にとってのサンタさんなんだろ』
「……よく憶えてるね、ほんとに。そんな子どもの頃のこと」
『俺にとってのサンタさんもお前ってことになるからな』

「ふふ。そう、それならそれでいいけど」
『何か不満かよ』
「ううん。……あなたがそれで幸せなら、わたし、もうそれでいいや」
『無欲だなー。俺は幸せなお前の横で幸せになりたいんだけど?』

「…………」
『黙るなよ。そこで』

「……いや、相変わらず恥ずかしい人だなぁって」
『相変わらずとは何だ』
「子どもの頃からずっとそうだよね。ほんと、心臓いくつあっても足りない人なんだから……」
『そりゃそうしてやろうと意識してたから』

「え、してたの?」

『嘘。してねーけど。自覚して意識しだしたのは高校卒業してからだけどさ』
「あーびっくりした……とんだマセガキだったのかと思った」
『英』
「はい?」

『会いたいな』

「…………」
『黙るなって。そこで』

「いや、恥ずかしい人だなぁって」
『ループすんな。……なぁお前今なにしてる?』
「ん? お部屋でのんびりしてるよ」
『クリスマスなのに誰かと過ごす予定もねーのかよ』
「まあ、プレゼント届くってわかってたし、……一也がいないなら、誰といても一人でいてもきっと同じだし」

『…………』
「黙らないでよ。そこで」

『お前も大概恥ずかしい人だよな? 言っとくけど俺、お前の物言いにはだいぶ影響受けてっからな?』
「それも嘘?」
『嘘じゃねーよ。恥ずかしい恥ずかしいって言うけど、八割方お前のせいだぞ』
「人のせいにしないで頂戴」
『いやマジで』

「一也はなにしてるの?」
『俺はねー、クリスマスパーティー早抜けした帰り道』
「早抜けなんてして大丈夫?」
『むしろ追い出された感がスゲェ』
「なにそれ、嫌われてない?」
『いや、早く会いに行けってさぁ、すげーせっつかれてんの』

「…………」
『もしもし? 英? 英さーん?』

「……ねぇ、来たりしてないよね?」
『さーて、どうかな。どっちだと思う?』
「パーティー早抜けして、真っ直ぐ帰ってるんだよね?」
『当ててみろよ、俺が今どこにいるか。得意だろ、昔から。……なぁ、泣くなよ』

「なんで解ったの……」
『解るよ、お前のことなら』
「もう一也ヤダ……」
『それは傷付くから照れ隠しでもやめろって言ってんのに』
「……やだ」
『お前が一言素直になってくれたらなー、俺もあとちょっと勇気出せるのになー。あー寒いなー、けっこう待ったなー』
「嘘でしょ、もう、いつから居たのバカ」
『はっはっはー。あ、待て待て、下りてこなくていーからさ。なんか俺に言うことない?』

「ねぇ、一也。会いたい」

『…………』
「…………」
『…………』

「黙らないでよ……」
『いやー思ったよりストレートに来たなと思ってちょっと照れた、はは。それじゃあなたのサンタさんから、御幸一也のお届け物です』

「メリークリスマス」



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merry christmas! 2017.12.24 アルエ