入学から早二ヶ月、恵との共同任務はめっきり減り、圧倒的に単独任務が増えた。
実力も経験も足りない私が行ける任務なんてたかが知れていて、呪物の回収や低級の呪いの討伐など正直簡単すぎてつまらない。
会話する相手が補助監督の方ばかりで恵への軽口が叩けないのは少し寂しくもあった。
恵は私の地元仙台、私は盛岡から四時間もかかる田舎に来ています。
見渡す限りの田んぼ、畑。最寄駅からの道すがら見掛けたのは腰の曲がったお年寄りばかり。
「お年寄りの呪い…?」
「あんた、高専の人?」
落ち着いたアルトの聞えた方へ身を向けるとこの地点に来て初めての若い女の子が怪訝そうな面持ちでこちらを見ていた。
「そうです。あなたは地元の人?」
「釘崎野薔薇、高専入学予定者よ」
それを聞いて合点がいった。
気分が落ちていた私を見かねて五条先生は敢えて私をこちらに派遣したのだろう。――いや、そんな配慮してくれる人か?
「私は名字名前、同級生!よろしくね」
野薔薇は私の顔をジーっと見つめ数秒後にやっと伸ばした手を握ってくれた。
「ここら辺は今野薔薇ちゃんの管轄なの?」
「まぁそうね。普段は下級の呪いばかりだけど」
今回は学生の鬱憤が溜まりに溜まって大きな呪霊を形成してしまったらしく、彼女一人では対応しきれない可能性があるため私が派遣されたそうだ。
派遣された私には何の説明もしなかったくせに…先生は彼女には説明していたらしい。やっぱり私のためを思った派遣じゃなかったじゃん。
完全に早合点だった、恥ずかしい。
□ □ □
野薔薇の案内で地元中学の屋上へと向かった。何の変哲もない只の学校、そこで残業中の教師がいなくなっていると説明された。
「屋上ってなんかテンションあがらない?うちの中学上がれなかったから…」
「わかる」
なんてことない雑談を終え、ぴりりと緊張感が漂った。
「来たね」
「闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え」
帳を下ろして共闘スタートだ。
□ □ □
「いやー、野薔薇ちゃんめっちゃかっこいいね」
「野薔薇でいいわ。私も名前って呼ぶから」
どうやら先の共闘で私は野薔薇に認められたらしい。同級生、しかも女子とは仲良くしたい。笑顔も見せてくれるようになったのでふわふわとした気分でいた。
「この後はどうするの?」
「任務も終わったしゆっくり帰るよ、時間かかるからね…」
「…そう」
往路の煩わしさを思い出しため息をついた。
出張は日常茶飯事であり、仕方ないことではあるが移動に掛ける時間が惜しいといつも思ってしまうのだ。こういうとき五条先生がうらやましく思う。
「…野薔薇、またすぐ会えるよ。高専で待ってるからね」
自惚れでなければ野薔薇は別れを惜しんでくれていると思う。
少しクサい台詞だったかなと恥ずかしくもなったが、不満げに尖らせた口はもう弧を描いていたのでつられて私も口角が上がった。