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君の思い出消去ボタン

その後、結局冴木くんは今日日学校には来ていない。私もその方が楽なので喜ばしいことだが、ちゃんとケジメを付けて別れないといけない。
でも、やっぱり怖いな、と思ってはいるので人の多い所で話そうと思う。誰かと一緒に話すとか……。三郎と雷蔵は知っているし、頼んでみてもいいかもしれない。2人共に頼めば、お互いに嫉妬したりしないはずだ。


そして今日はバレンタイン。もちろん女子にとっては一大イベント。この時期私の幼馴染み達は本当に沢山チョコを貰っている。私も食べきれないという理由で食べて欲しいと言われるが、どれもこれも有名な高級ブランドチョコで既に一生分の高級チョコレートを食べてしまっているような気になってしまう。おそらく、手作りチョコや開封済みのものは受け取らない、と言っているから市販品のチョコレートなのだろうが、その中でも格差を持たせるべく高いものを高いものをと競争してしまっているのだろう。それを食べるのは結局本人ではないのだからなんだか申し訳ない。

私も、手作りチョコは受け取れない、との言葉を聞いてから市販品のチョコを渡したのだが、三郎と雷蔵が手作りが食べたかったと、すごく落ち込んだので結局今は手作りのチョコを渡している。
そして今年は、三郎と雷蔵には手作りのケーキを焼いたので後で家に来てもらうことにして、兵助くんと勘ちゃんとハチくんには市販品のものを用意した。手作りが苦手だとこっちも申し訳ないしね。

「兵助くん、勘ちゃん、おはよう!」
「おはよう。」
「おはよっー!」
「はい、これバレンタイン。」
「えっ!?やったー!」
「ありがとう、翠。」

2人共喜んでくれて私も一安心したが、勘ちゃんが首を傾げて不思議そうな顔をする。

「翠は絶対手作りだと思ったんだけどなぁ!あっ、全然市販でも嬉しいんだよ?」
「手作りって苦手な子がいるでしょ?だから、三郎と雷蔵以外には市販品にしてるの。」
「えー!ずるい!俺も手作りがよかったぁ…。」
「そうだな。翠は数少ない信頼できる子だし。」
「えっ、そうなの?えへへ、嬉しいな…。じゃあホワイトデーは何か作ってくるね。」
「ホワイトデーはお返しの日なのに?」
「お返しのお返し?になっちゃうね。」

3人で笑っていると、予鈴が鳴ったので席についた。



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「あのね、来週時間あるかな?いつでもいいんだけど……」
「僕はいつでも空いてるよ。」
「私は火曜日が委員会だな。」
「他の日は放課後空いてる?」

空いている、と頷くとパッと笑ってじゃあ金曜日に家に来て欲しいと言う。勿論だと頷けば絶対空けておいてね、と可愛いこと言いながら教室へ帰って行った。

「はぁ……可愛い。」
「金曜日は……14日だな。」
「間違えて#bk_name_2#たべちゃったらどうしよう。」
「私が全力で止めるから安心してくれ。」
「別に止めなくて良いんだよ。」
「指を咥えて見てろと?」
「うーん、僕は混ざってもいいけど。」
「翠が辛いだろう。」

僕が真ん中でも良いけど、と思えど言えなかった。翠に引かれでもしたら暫く立ち直れない。受け入れられる人もいれば、受け入れられない人もいる。翠が後者だった場合は良いが、前者だったら?確実に離れてしまうだろうということは分かるが、それを黙って見送れるだろうか。絶対に無理だ。今更翠無しの生活なんて考えられない。今後もずっと一緒にいる為に、三郎と共に沢山シミュレーションした。

「はぁ……困ったなぁ。こんなに執着すると思ってなかったんだけど。」
「困ってるなら私が貰ってもいいか?」
「選ぶのは翠なんだけど?」

翠に好かれているとは思う。でも、それがただの友愛なのは僕も三郎も分かっていた。いつか翠にも好きな人が出来て、いずれ誰かと結婚するかもしれない。それに耐えれるのか。まるでそんな気はしないが、慣れなければならない。
そんな矢先だ。翠が冴木に会いに行くなどと言い始めたのは。
何故なのか聞けば、一応彼氏だからバレンタインのチョコを渡すためだという。
嫉妬で気が狂いそうだ。

「でも翠、あんなことがあったのに会いに行くの?危ないんじゃないかな。」
「うん……だから雷蔵達にもついて来て欲しいなぁって……だめ?」
「ああ、そういうことだったんだ。勿論良いよ。」
「私も大丈夫だ。」
「2人共ありがとう!凄く悩んでたから助かった…!」
「悩む前に相談してくれたらいいのに。」
「えー?雷蔵ってば、私より悩んでるのに?」

顔を覗き込まれてくすくすと笑っている翠が可愛くて抱きついてしまいそうだった。勘のいい三郎が直ぐに腕を掴んで止めてくれたけど、それが無ければ抱きしめてしまっていただろう。

「どこで渡すつもりなんだ?」
「メールしたら家まで来て欲しいってきたから、家まで行くよ。大丈夫?面倒じゃない?」
「まさか。そんなこと思うはずないよ。」
「そうだ、この間翠が食べてみたいって言っていたたい焼き屋が近くにあるから帰りに寄って帰ろう。」
「えっ、そうなの?うん、食べたい!」

たい焼きの話をしながら歩いているとすぐに着いた。チャイムを鳴らすと女の人が出てきた。きっと母親だ。母親は僕達を歓迎してくれて、家の中へ招き入れてくれた。家の中へ招き入れてくれ、冴木の部屋まで案内してくれた。
翠がノックをして、戸を開けると部屋着姿の冴木が先頭にいた翠に抱きついた。僕は殴り飛ばさないように必死で耐えた。

「さ、冴木くん、」
「翠!翠、ああ、翠なら絶対来てくれると思ってた!」
「翠だけじゃないが。」
「はっ!?」
「翠から離れてくれないかなぁ。」
「な、なんでお前らがここに…!?」

彼は慌てて翠から離れ、3歩下がった。三郎は呆れたように溜息をつき2人きりにする訳がないだろうと肩を竦めた。翠にチョコのことを言うと、鞄から取り出し冴木に渡した。可愛くラッピングされた既製品のチョコだ。

「これ、バレタンインのチョコ、良かったら受け取って。」
「あ、りがとう…。」
「それで、今日は話があって。」
「はなし、」
「冴木くんが私に望んでいることは、多分私じゃ叶えてあげられないと思うんだ……だから、私と別れて欲しくて…。短い間だったけどありがとう。」
「翠、そんな、なんで、」
「三郎、翠。実は僕彼と話があるんだ。先に出ててくれる?」
「え、そうなの?」
「分かった。じゃあ先行ってる。」

不思議そうな表情の翠を三郎が背を押して2人はそのまま部屋から出て行った。
ゆっくりと冴木の方を見れば彼は可哀想なほど震えている。

「そんなに怯えてないで、とりあえずこれからの話をしようか?」


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