20

雪解けまであと、さんぽ

ゆっくりと目を開けると、視界は毎日見ている天上でいっぱいになっており、朝なのかと寝ぼけた頭でゆっくり考えて今見た夢が思い出すことができずに頭を押さた。ゆっくりと手を首に下ろしてそっと触る。そう、首を絞められていた。私が、あの人に。

「翠…!良かった、目を覚ましたんだな。大丈夫か?……まだ首が痛いか?」
「あぁ、三郎……助けてくれたんだよね、三郎達が……。」

迷惑かけてごめんね、という言葉は咄嗟に呑みこんだ。それを彼は望んでないから。

「助けるのが遅くなって……」
「三郎。」
「……翠?どうした?」
「助けてくれてありがとう。本当に、助かった。三郎と雷蔵がいて良かったよ。私幸せ者だ。」

そう。私は幸せなんだ。ちょっと不幸なことくらいみんなある。
悲観するだけの人生にはしたくないから、まずは受け入れることからはじめて、少しずつ歩み寄ればいいんだ。私はどうしてこんなに、落ちこんでいたのか。
死と直面したからか、どうしてか心の重荷が取れた気がした。自分の切り替えの早さに思わず笑ってしまった。

「三郎、あのね。私、三郎と雷蔵に言いたいことがあるの。でも、今は怖くて言えなくて。二人に秘密を作っちゃうけど、それでも一緒にいてくれる?」

首を傾げながら聞くと、三郎は固まった体をゆっくりと動かして、私の左手をゆっくりを彼の両手で包み込んだ。ふぅ、深呼吸をしてから私と目を合わせる。

「翠が嫌だと泣き叫んでも、一緒に居たいんだよ、俺は。」

彼が自分のことを俺と言ったのは何年振りか。私と雷蔵しか知らないその姿を、私にもまだ見せてくれることに心が歓喜していた。その高ぶった感情は抑えきれず、つい三郎の手を跳ねのけて彼に抱き着いてしまった。

「三郎も雷蔵も大好き。大好きだよ。嫌って泣き叫んでも、離してやらないんだから!」
「ふふっ、それはこわいなぁ。」

言葉とは裏腹に、三郎はくすくすと笑う声を止めず、私を強く抱き返してくれた。その温かさに、私はずっと支えられてきたのだ。


「もうじき雷蔵も帰ってくると思うから夕食にしよう。翠は何が食べたい?」
「三郎が作ってくれるの?」
「ああ、翠ほどは上手くないけど、簡単な料理くらいなら作れるさ。」
「三郎は本当にいろんなことができるね。」
「まぁ、容量が良いのは認めるが、何でも熟せても手に入らないものもあるのさ。」

少し寂しそうに言う三郎を見て、瞬時に記憶を辿った。彼が今まで手に入っていないものなんてあるのか。勉強も出来てスポーツも出来る。そんな分野では留まることを知らないくらい初めてのことでも簡単にこなせてみせる。……それに、雷蔵だって、いる。
彼は私がまだ何も知らないと思っているのだろうが、私はそのことに気付いてしまった。もしかして、日本ではまだ同性の結婚があまり寛容ではないことに困っているのだろうか。そうだとしても、三郎は何れ地位と権力を持ち、人々を認めさせてしまうのではないかと思ってしまう。

「それで、何か食べたいものは?」

話しが戻ったので、とりあえず無難にハンバーグが食べたいと言った。病み上がりだが、チーズの入ったやつが食べたい。

「じゃあ序でに雷蔵に材料買って来てもらおう。」
「雷蔵に?でも荷物沢山あるんじゃないかな?」
「翠が食べたいって言えば直ぐに買って来てくれるさ。」

そうかなぁ、と思ったが、考えてみれば確かに雷蔵は私が欲しいものなど率先して買って来てくれる。翠が嬉しいことが一番嬉しいと言ってくれるのは勿論嬉しいのだが、若干の照れがあるのは否めない。彼はいつも直球だから。

「ああ、雷蔵か?今どの辺りだ?」

ぼんやりとしていた私の前で、三郎が電話を掛け始めたことにより意識が覚醒し、雷蔵の声を聞くために三郎のもつスマートフォンに顔を近付ける。雷蔵が何か言っているのは聞こえるが、何と喋っているのかは聞こえない。一体何を言っているのだろうと考えていると何故か三郎がくすくすと笑い始める。

「はははっ、そんなこと言っても良いのか?
ゆっくりと目を開けると、視界は毎日見ている天上でいっぱいになっており、朝なのかと寝ぼけた頭でゆっくり考えて今見た夢が思い出すことができずに頭を押さた。ゆっくりと手を首に下ろしてそっと触る。そう、首を絞められていた。私が、あの人に。

「翠…!良かった、目を覚ましたんだな。大丈夫か?……まだ首が痛いか?」
「あぁ、三郎……助けてくれたんだよね、三郎達が……。」

迷惑かけてごめんね、という言葉は咄嗟に呑みこんだ。それを彼は望んでないから。

「助けるのが遅くなって……」
「三郎。」
「……翠?どうした?」
「助けてくれてありがとう。本当に、助かった。三郎と雷蔵がいて、本当に良かったよ。私幸せ者だ。」

そう。私は幸せなんだ。ちょっと不幸なことくらいみんなある。
悲観するだけの人生にはしたくないから、まずは受け入れることからはじめて、少しずつ歩み寄ればいいんだ。私はどうしてこんなに、落ちこんでいたのか。
死と直面したからか、どうしてか心の重荷が取れた気がした。自分の切り替えの早さに思わず笑ってしまった。

「三郎、あのね。私、三郎と雷蔵に言いたいことがあるの。でも、今は怖くて言えなくて。二人に秘密を作っちゃうけど、それでも一緒にいてくれる?」

首を傾げながら聞くと、三郎は固まった体をゆっくりと動かして、私の左手をゆっくりを彼の両手で包み込んだ。ふぅ、とゆっくり息を吐いてから私と目を合わせる。

「翠が嫌だと泣き叫んでも、一緒に居たいんだよ、俺は。」

彼が自分のことを俺と言ったのは何年振りか。私と雷蔵しか知らないその姿を、私にもまだ見せてくれることに心が歓喜していた。その高ぶった感情は抑えきれず、つい三郎の手を跳ねのけて彼に抱き着いてしまった。

「三郎も雷蔵も大好き。大好きだよ。嫌って泣き叫んでも、離してやらないんだから!」
「ふふっ、それはこわいなぁ。」

言葉とは裏腹に、三郎はくすくすと笑う声を止めず、私を強く抱き返してくれた。その温かさに、私はずっと支えられてきたのだ。


「もうじき雷蔵も帰ってくると思うから夕食にしよう。翠は何が食べたい?」
「三郎が作ってくれるの?」
「ああ、翠ほどは上手くないけど、簡単な料理くらいなら作れるさ。」
「三郎は本当にいろんなことができるね。」
「まぁ、容量が良いのは認めるが、何でも熟せても手に入らないものもあるのさ。」

少し寂しそうに言う三郎を見て、瞬時に記憶を辿った。彼が今まで手に入っていないものなんてあるのか。勉強も出来てスポーツも出来る。そんな分野では留まることを知らないくらい初めてのことでも簡単にこなせてみせる。……それに、雷蔵だって、いる。
彼は私がまだ何も知らないと思っているのだろうが、私はそのことに気付いてしまった。もしかして、日本ではまだ同性の結婚があまり寛容ではないことに困っているのだろうか。そうだとしても、三郎は何れ地位と権力を持ち、人々を認めさせてしまうのではないかと思ってしまう。

「それで、何か食べたいものは?」

話しが戻ったので、とりあえず無難にハンバーグが食べたいと言った。病み上がりだが、チーズの入ったやつが食べたい。

「じゃあ序でに雷蔵に材料買って来てもらおう。」
「雷蔵に?でも荷物沢山あるんじゃないかな?」
「翠が食べたいって言えば直ぐに買って来てくれるさ。」

そうかなぁ、と思ったが、考えてみれば確かに雷蔵は私が欲しいものなど率先して買って来てくれる。翠が嬉しいことが一番嬉しいと言ってくれるのは勿論嬉しいのだが、若干の照れがあるのは否めない。彼はいつも直球だから。

「ああ、雷蔵か?今どの辺りだ?」

ぼんやりとしていた私の前で、三郎が電話を掛け始めたことにより意識が覚醒し、雷蔵の声を聞くために三郎のもつスマートフォンに顔を近付ける。雷蔵が何か言っているのは聞こえるが、何と喋っているのかは聞こえない。一体何を言っているのだろうと考えていると何故か三郎がくすくすと笑い始める。

「はははっ、そんなこと言っても良いのか?翠が聞いているぞ。」

私に聞かれると何か問題があるのか。
本人を目の前に酷いことをするなぁ、と三郎をジト目で見ているとスマートフォンを渡された。

「あ、雷蔵?」
「………翠、今の会話聞いてた?」
「え?雷蔵の声は聞こえてないよ。」

三郎って嘘つきだよね、と怒った声で言えば電話の向こうで安心した声音に変わり、その意見に同意する。
私の電話で、私の悪口を言うな、と取り上げられてしまったが、今度はスピーカーにして私にも聞こえるようにしてくれた。

「スーパーの近くにいるなら材料を買って来てくれ。後でメールするから。」
「えっ、もうスーパー過ぎたんだけど…」
「戻れば良いだけの話じゃないか。翠を置いて家を出られないだろう。」
「うん、じゃあ買って帰るよ。誰が作るの?」
「私だ。」
「えっ、じゃあその間翠とお話できるね。やった。」
「いっぱいお話しようね。」

明日も、明後日も。
その為には、私も頑張らないといけない。ちゃんと清算して、またいつも通りの日常を送る為に。

「あっ、私チーズの入ったやつがいいな。たくさん作ってね!」
「翠が食べきれないほど作ってやるさ。」

そんなにはいらないよ、と頬を膨らませればまた三郎と雷蔵は声を揃えて笑った。翠が聞いているぞ。」

私に聞かれると何か問題があるのか。
本人を目の前に酷いことをするなぁ、と三郎をジト目で見ているとスマートフォンを渡された。

「あ、雷蔵?」
「………翠、今の会話聞いてた?」
「え?雷蔵の声は聞こえてないよ。」

三郎って嘘つきだよね、と怒った声で言えば電話の向こうで安心した声音に変わり、その意見に同意する。
私の電話で、私の悪口を言うな、と取り上げられてしまったが、今度はスピーカーにして私にも聞こえるようにしてくれた。

「スーパーの近くにいるなら材料を買って来てくれ。後でメールするから。」
「えっ、もうスーパー過ぎたんだけど…」
「戻れば良いだけの話じゃないか。翠を置いて家を出られないだろう。」
「うん、じゃあ買って帰るよ。誰が作るの?」
「私だ。」
「えっ、じゃあその間翠とお話できるね。やった。」
「いっぱいお話しようね。」

明日も、明後日も。
その為には、私も頑張らないといけない。ちゃんと清算して、またいつも通りの日常を送る為に。

「あっ、私チーズの入ったやつがいいな。たくさん作ってね!」
「翠が食べきれないほど作ってやるさ。」

そんなにはいらないよ、と頬を膨らませればまた三郎と雷蔵は声を揃えて笑った。


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