おはよう、今日も幸福な一日を
幸せな朝とはきっとこういう日を言うんだろう。トントンと包丁がまな板を叩く音。卵の焼けるいい匂いがする。瞼を開けたマタ・ハリはそのまま唇に花のような笑みを浮かべた。寝間着代わりに放られたままの彼のシャツを羽織って、ベッドから抜け出す。キッチンに立つ存外広い背中に抱きつくと、おはようと笑んだサンソンは額に一つ口付けをくれた。
「オムレツ?」
「ああ」
「甘いの」
「君の好みは知ってる」
当然のように囁いた唇にキスをする。頭一つ高い彼に合わせるように、背伸びをして。抱き止めた彼女をじっと眺めた彼は、少しだけ熱っぽい目をしていた。なあにと訊けば「そそられるなと思って」と手のひらがシャツから覗く腹を撫でたので、助平と笑うとそのままするりと逃げ出した。
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