味見して?



 宴がある日の厨房は火の車で、時々出入りしているだけに過ぎないサンソンもディナーの準備に駆り出されてしまった。スープが煮え立つ大鍋を前にううん、と首を傾げる。ちょうどその時配膳を手伝っていたマタ・ハリが側を通りがかったので、少し助けてほしいと手招いた。ん、とスプーンを差し出せば、意図を察した彼女は素直に口を開く。こくりと飲み終えた顔を覗きこむと、思案気に眉根が寄せられた。
「……少し味が薄いんじゃないかしら」
「やはり、そうか」
 そのまま別の料理を会場へと運びに行った背を見送って、向き直った大鍋と調味料を前にまた唸る。
「……微笑ましいなあ」
「犬も食わんぞ。自覚もないからな」
 一部始終を見ていたらしい他の厨房係達はどことなく呆れた顔でそう言葉を交わしたが、真剣に悩むサンソンには届いていないようだった。


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