タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
← →
2026/05/09 ロー
拝啓、きみがすきです・風に舞い踊る髪・真綿より両手で
▼
「嫉妬ごっこがしたい」
「はあ?」
「嫉妬ごっこ!」
「……いや、聞き取れなかったわけじゃねェ。嫉妬ごっことやらが何かわからねェ疑問符だ」
ちゃんと話聞いてよね、と言わんばかりに大きな声で言い直してくれたのはありがたいがそういうことじゃなかった。何言われてるのかがわからない。嫉妬もごっこも単語の意味はわかる。でも、こいつの求める嫉妬ごっこの中身がわからない。
「……おれは何すればいいんだ?」
「今あの子見てたでしょ?」
「…………見てねェだろ。誰だよ、誰か通ったか?」
話が二転三転する恋人に呆れながらその視線の先を探す。でも誰もいない。
「さっきの女の子と何話してたの?」
「……誰のことだ? 今日はお前としか喋ってねェ……いや、イッカクとは喋ったな、デート楽しんでくださいって言われた、……見てたか? いや見てるはずねェな」
船降りる時に言われたやつだし。じゃあ誰のことだ?
「………………八百屋の奥さんか?」
さっき通りすがりに野菜をおすすめしてきた人をどうにか絞り出した。瞬間、目の前の恋人がつまらなそうな、でもうれしそうな、なんだか見たことがない複雑な表情をしていて眉を顰めた。いったいなんなんだ。
「嫉妬する余地なんてないからちょっと嫉妬ごっこしたかったんだけど、やっぱりローはそのまんまでいいや。嫉妬ごっこおしまい!」
「はあ?」
知らない間に嫉妬ごっことやらが始まって、知らない間に嫉妬ごっことやらが終わったらしい。
← →