運命にはじめまして


窓から差し込む眩しい日差しに小鳥は目を覚ます。ぼんやりと枕元を見れば、目覚ましは既に7時を指していた。今日の講義は何時からだっただろうか――…悠長に考えながらベッドから降りると、携帯が着信を告げる。画面に表示されたのは「毛利蘭」の文字で、彼女は慌てて電話を取った。

「…もしもし。」
『あ、小鳥ちゃん?私、蘭だけど…今日の夜って空いてないかな?』
「夜?大学が…えっと3時半までだからそれ以降なら空いてるけど、どうかしたの?」
『実は、お父さんの同級生の結婚祝いパーティに招待されてるんだけど、私部活の都合で行けなくなっちゃって…。当日にキャンセルするのも悪いから、代わりに行って貰えないかなって。ほら、お父さんの助手って事にしておけば問題ないから!お願いできない?』
「いいよ、蘭ちゃんの頼みならお安い御用だよ!」

子供のころによく遊んだ年下の幼馴染、彼女の困り果てた声には弱いのだ。小鳥は二つ返事でOKを出す。店の場所や時間を聞いて、蘭との電話を切る。ちらりと時計を見ると、起きてから大分時間が経っていた。どうやらのんびり朝食を取っている時間は無さそうだ。
行きにコンビニで何か買おうと、彼女は通学用のバックを取った。玄関を開けようとしてふと手が止まる。

「…小五郎おじさまが招待されているパーティって事は…必然的にアイツも来るって事よね。うーん…どうにも平和に終わる気がしないけど、何も起きませんように。」

死神と噂される事件寄せ付け少年の顔を脳裏に思い出し、彼女は扉を開けた。

 足早に大学への道を急ぐと、一人の男性とすれ違う。褐色の肌に淡い金色の髪の毛、日本人ではないのだろうか――と、少し振り返りながら彼女は思った。

「やばい、遅刻だ遅刻!」

走り去る自分の背中を、その男が見ていたとは知らずに――…。
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