今夜、パーティにて


「頼太君、初音さん!結婚おめでとう!」
祝いの言葉と共に、複数のクラッカーが鳴る。
主役の二人は、輪の中心で嬉しそうに寄り添っていた。
「よ!ご両人妬けるねぇ!」
「いやいや、式は明日!俺達はまだ結婚した訳じゃないんだけど…。」
「いいじゃない!今夜は前夜祭!式が終わったらすぐにハネムーンでパリに飛んじゃうんだから…」
小五郎が声を掛けると、新郎の伴場頼太は「久しぶり!」と声を掛けながらやって来る。そして、新婦の加門初音に彼の紹介を始めた。
「高校時代の悪友、毛利小五郎だ!」
「まあ、あの名探偵の!となるとこちらのお二人は毛利さんの…」
「あ、いえ!娘の蘭ちゃんが来れなくなってしまったので、代理できました桜庭小鳥と申します。毛利先生の助手をやらせて頂いてます。」
「居候のコナンです…。」
「わけあってウチで預かってるんスよ!小鳥ちゃんは俺の優秀な助手です!」
小五郎をジト目で見るコナンを横目に、小鳥は紅茶に口を付けた。
進む話を聞いていると、この伴場頼太と加門初音は、誕生日と血液型が同じで黙っていてもお互いの考えて居ることが解るときがあるらしい。
まるで運命の相手だ――…とぼんやり思っていれば、ガチャンと言う音と共に、伴場のズボンへとケーキが落ちた。

「す、すみません!」
「あら、ケーキ踏んじゃってるわよ!?」
「本当にすみません…自分、ここのバイト今日が初めてで…。」
「大丈夫!それより、ズボンを拭くおしぼりとか持ってきてくれる?」
申し訳無さそうに眉を下げながら、慌てておしぼりを取りに戻るウエイターの後ろ姿を、小鳥は目で追った。
するとコナンが不思議そうに首をかしげる。
「どうしたの、小鳥のねーちゃん…あのウエイターさん気になる?」
「…え?いや、あの人どこかで見たような気がするんだけど…気の所為よね。伴場さん、こっち拭きますね。」
ズボンについたケーキをふき取る。追加で彼が持って来たおしぼりも使えば、随分と綺麗になった。
それを見て安心したのか、加門初音はネイルサロンに行くと席を立った。
「つけるのは式の直前にすればいいよに…どーせ寝る前に外すんだから。」
「いえ、おじさま。ネイルチップは普通24時間つけっぱなしよ。今私がしてるのもそうだし…。」
「え!?風呂に入るときもかよ!大変だな女って…。」
呆れたような小五郎の言葉に、小鳥は苦笑する。
どうやら何か起こりそうなのは思い過ごしだったようだ――と、彼女は安心した顔で紅茶を啜った。
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