ロビーの中
舞台最終日の翌日。コナンたちは羽田空港の出発ロビーに来ていた。
「怪盗キッドから宝石守ったんでしょ?良かったじゃない!」
「あ…ああ。でも昨日のキッド、何か変で…最初から盗む気なんて無かったんじゃ…。ん?オメーどうした、腰抑えて。」
「え!?ああ…昨日誰かさんの看病をずっと中腰でしてたから少し痛くて。後で痛み止め飲むから大丈夫だよ。」
怪訝そうな顔をするコナンを何とか誤魔化し、小鳥は息を吐いた。
「安室さん、もう体調は大丈夫なんですか?」
「ええ、彼女が献身的に面倒を見てくれたのでもうすっかり。心配をおかけしてすみません…。」
蘭に問いかけられ、安室は苦笑した。キッドを逃したものの、スターサファイアを守りきったという事で彼らは函館にある樹里の別荘へ招待され、今から向かうところだ。しかし函館は生憎の雷雨で、子供たちが心配そうな声を上げる。
「飛行機に雷が落ちたらどうしよう…」
「大丈夫ですよ、飛ぶのは雲の上ですから!」
「あら、着陸するのは雲の下なんじゃない?」
暫くそれぞれが会話を続けて居れば、舞台に出たメンバーたちが集まってくる。しかし肝心の牧樹里の姿が見えず、伴は辺りを見回した。
「それにしても、樹里のやつ遅いな…。」
「本当」
天子が続けて言うと真佐代が「すみません」と声をかけた。
「今、なつきさんにメイクをしてもらってるんです。駐車場の車の中で。」
「メイクですか。大女優ともなると大変なんスなぁ…。」
小五郎の言葉に、天子が「大変なのはなつきちゃんの方よ。」と口を挟んだ。伴も同意するようにそれに頷く。
「樹里にすっかり重宝がられて…付き人のような事までさせられてるからな。」
「ああ…なるほど」
小五郎が言葉に困っていると、サングラスを掛けた樹里が「はーい」と手を上げてやってきた。その後ろには、スーツケースとバックを持ったなつきもいる。
「お待たせ、皆さん」
「いや〜今日もまた、一段とお綺麗ですな!」
「どうも、毛利さん」
樹里はサングラスを外して胸のポケットへ入れ、一同を見渡した。
「全員、揃ってるみたいね。」
「いや、まだ新庄くんが――…」
「新庄さんなら、体調が悪いからキャンセルするって今朝電話があったんです。」
「あら、そうなの。残念ね、樹里。」
天子の言葉に、樹里は「え、何が?」と不思議そうな顔をした。天子は意味ありげにちらっと成沢を見る。どことなく不穏な空気が漂う中、蘭が「あのぉ、」と口を開いた。
「他の役者さんたちは来ないんですか?」
「当たり前じゃない、端役の連中なんて呼んでも何のメリットも無いでしょ?」
ニッコリと微笑む樹里に、蘭と小五郎は言葉を詰まらせた。後ろで話を聞いていた小鳥も不機嫌そうな表情になり安室は思わず苦笑する。するとその時、凍てつくような鋭い視線を感じてコナンは振り返った。しかし一同の表情にさしたる変化はない。しかしこの中の誰かの殺気立った視線を確かに感じた。人が行き交う出発ロビーの中、コナンは静かに一同の表情をうかがった。
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