事件の結末


事情聴取を終え戻って来た小鳥は、こっそりと安室に耳打ちする。「やっぱりなかった」と言う彼女の言葉を聞き、安室は確信をする。
「…安室さん、自首したら罪は軽くなりますか?」
「ええ、それは刑法で定められている事ですからね。小鳥さん、貴女若しかして自首を進めるつもりですか?」
「友達だから、出来ることはしてあげたい。同時に、友達なのに悩みに気付けなかった私の落ち度でもあるから…せめてあのこが罪を償うことに協力してあげたいの。それが、私の贖罪です。だから、任せてもらいませんか?今日は私立探偵安室透は休業です。弟子の新米探偵桜庭小鳥が頑張ります。密室のトリックも分かりましたから」
小鳥は安室に笑いかけて部屋を出る。そして八重と香澄の腕を引くと、誰も居ない講義室へと連れ込み鍵を掛けた。
「ちょ、ちょっと小鳥、どうしたの?」
「お願い……自首して、香澄ちゃん」
まっすぐに香澄を見れば、彼女は驚いたように目を開く。八重は訳が分からないと言うように香澄と小鳥を交互に見た。
「待ってよ、香澄は死亡推定時刻にあたしたちと一緒にご飯食べてたんだよ?小鳥も一緒に居たじゃない!…香澄が犯人だって言うの?」
「でも、一度トイレに行ったよね。その時間で十分殺せたはずだよ。…勿論、他にアリバイの無い生徒も沢山いる…。でもね、その中でも香澄ちゃんがあの部屋に居たっていう動かぬ証拠が、貴女が犯人であることをさしてるの」
小鳥はハンカチにくるまれたボタンを取り出して二人に見せる。それは間違いなく、香澄の袖のボタンだった。彼女の顔色がみるみる悪くなっていく。八重は泣きそうな瞳で香澄を見つめた。
「…先生の首を絞めたとき、抵抗されてボタンが飛んだんだろうね…。このボタンに先生の指紋が残っていたり、逆に先生の指から服の繊維や皮膚片が発見されれば貴女が犯人だという事は分かってしまう。…そうなってからじゃ遅いの。だから、自首して、香澄ちゃん」
俯いた香澄の目から涙が零れる。彼女はその場に崩れるように膝をついた。
「…ずっと、ずっと嫌だったの…寝ないと単位を落とすって脅されて…今日も呼び出されてあの人の部屋に行ったら…抱かれそうになって、もう…殺すしかないと思った。この人がい無くなれば私の学校生活は平和になるって…」
小鳥は彼女の前にしゃがみ込み、視線を合わせるようにして香澄を抱きしめた。八重も同じように反対側から彼女を包み込む。
「…気づいてあげられなくて、ごめんね。香澄ちゃん…」
「あたしも、ずっと一緒に居たのに…ごめん、ごめんね香澄…」
二人に抱きしめられた香澄は涙を止めることが出来ず、声が枯れるまで泣き続けた。

「それにしても、密室のトリックって何だったんですか?」
事件が解決し、帰ろうとしていた高木がふと呟いた。「ああ、それなら」と小鳥は振り返る。
「糸ですよ」
「糸?」
「ええ、縫物するときの糸をポケットに通して…上から鍵を下して糸を引けば自然とポケットの中に入るでしょう?針と糸が必須になりますが…」
簡単に指を使って説明すれば、高木は納得したように「ああ!」と声を上げる。
「すっかり立派な探偵ですね、小鳥さん」
「いえいえ、安室さんには敵いませんよ」
そっと差し出された安室の手を小鳥は握る。繋がれた手の体温に、冷え切っていた心が温まるのを感じて、彼女は瞳を閉じた。
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