雨の止まない午後
『今日午後二時頃、米花公園交差点で、現職刑事・奈良沢治警部補(48)が射殺されました。犯人は逃走した模様です。本庁からも応援が駆け付け、捜査本部は米花警察署に設置されました』
「うわ〜刑事が射殺って物騒だねぇ…」
カフェで夕方のニュースを見ながら、八重はそうぼやく。隣の小鳥も心配そうな面持ちでテレビを見つめていた。その時丁度小鳥の携帯がメールの受信を告げる。
「あ、ごめんちょっと呼び出し…私行くね。お金置いとくから…」
「安室さん?付き合ってくれてありがとうね」
「八重ちゃんも気を付けて帰ってね」
手を振って八重と別れると、小鳥は再びメールを開いた。
『直ぐに警察庁まで来てくれ』
降谷よりの短いメールに嫌な胸騒ぎがして彼女は足を速めた。警察庁の前まで来ると、入り口に居た警備員が辺りを見回した後、小鳥に入館証を渡して中に入れる。そのまま待機していた公安の刑事に会議室へと誘導された。
「し、失礼します…」
「小鳥!良かった…いきなり呼び立ててすまない」
「いえ、どうしたんですか?」
「ニュース見たか?現職の刑事が殺されたって…。詳しい事は分からないがこれが組織の犯行ならお前に危険が及ぶかもしれないから一応傍にと思ってな」
ああ、と納得したように頷く。あの夢以降、降谷の心配性が磨きを増したような気がするが彼女も悪い気はしなかった。
「ついでにお前の意見も聞きたいんだが、良いか?」
「え…でも私素人ですし…」
「我々は情報に基づいて捜査をしますが、こう…ぱっと見の意見も聞きたいと言うか。まあ死体の写真を見ることになるので無理にとは言いませんが…」
隣に居た公安の刑事が眉を下げてそういう。慣れ、とまではいかないが、歩く事件簿の幼馴染のおかげで大分耐性はついている。小鳥は深呼吸して捜査資料を受け取った。
「拳銃は?」
「現場に落ちていた薬莢から9ミリ口径のオートマチックかと」
「それじゃあ女性にも扱えるありふれたものですね…何か目撃証言は無いんですか?」
「ああ、それなら江戸川コナンと言う少年が。犯人は左利きだって――」
ふ、と降谷の顔が曇る。左利きに悪い思い出でもあるのだろうか?と首を傾げるが、すぐに写真へと視線を戻した。亡くなった奈良沢と言う刑事は左胸を抑えていた。そこで小鳥はある事に気付き、風見へと歩みより胸元のポケットに触れた。
「桜庭さん?」
そのまま他の刑事たちのポケットにも触れていく。そして降谷の前で立ち止まった。
「零さんはいつも上着の内ポケットだけど、基本的に皆さん胸元に入れますよね、警察手帳。この奈良沢さんって人、それを示してたんじゃ…?例えば犯人は警察の人間だ…とか」
「成程…もしそうだとしたらマスコミにも情報規制をしないといけないな…。風見、警視庁への連絡はお前が頼む。それと明日の警備を強化してくれ」
「明日って、何かあるんですか?」
小鳥が尋ねると、降谷は振り返った。
「明日、晴月さんの結婚を祝う会がありますよね?」
「え、はい…そうですけど」
件の晴月光太郎は八重のイトコにあたる関係で、小鳥とも親しい間柄だ。ただ彼は画家で警察とは何の関りもない筈…と考えていれば、降谷は困ったように笑った。
「結婚相手の白鳥沙羅さん、警視庁捜査一課の白鳥任三郎警部の妹なんです」
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