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白いカブトムシ05もとい、白い少年。
垣根帝督はフレメア=セルヴィンと打ち止めとフロライン=クロイトゥーネのそばにいた。
主導権を奪い取った、優しい真の垣根帝督は彼女たちを見つめる。
この穏やかな、暖かい空気に触れられたのは、いつ振りだろう、と。

そっと垣根帝督の脳裏に一人の少女が浮かんだ。
いつも傍にいて、ずっと支えてきてくれた、少女の姿。
ただ一人愛する、恋人の姿が。
暗部にいて荒んでいた自分にも、穏やかな時間が確かにあった。
それは紛れもなく、彼女と過ごす時間だった。

また、会いたい。

自然に思いがあふれ出てきた。


「むむむ、なんだか嫌な予感がするって、ミサカはミサカは察知してみる」

打ち止めがいきなり真面目な顔つきになる。

「いやな予感、とは?」
「なんだかね。あの人が危ない気がするんだって、不安げに訴えてみる。だけど、あの人だけじゃないって、ミサカは付け加えてみる!きっと、あのお姉さんも、今すごく危ないって、ミサカはミサカは焦ってみたり!」」
「お姉さん?」
「氷のティアラを作ってくれたお姉さんがいるの!ねえ、カブトムシ!今すぐ連れて行って!って、ミサカはミサカは訴えてみる!」

氷のティアラ、
その単語にいてもたってもいられなくなった。


「六花……?」


彼女以外、考えられなかったから。