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白ノ乙女(ホワイトメイデン)。


聞いたことがあった。
一瞬に作り出される銀世界。
まるで魔法だと、非科学的な事を言うやつもいた。
それほどまでに惚れ惚れとしてしまうほど、多くのものを魅了する能力だと。
その圧倒的な力は、学園都市で最もLv5に近い、8番目になれる人材として噂されていた。
そしてもう一つ、新たに聞いた妙な噂があった。

ついに、白い妖精が目覚めた、と。

詳しいことを聞いたわけではない。
だが確かに嫌な感覚が俺の中ではあった。
何かとんでもないもの、それが俺に向かってくるような、そんな感覚が確かにあったのだ。










蒼南六花はタブレットから大量の錠剤を取り出し、飲み込んだ。
だがそこから何をするわけでもなく、ただ座りこんでいる。

「なにをしたの、こいつ。何にも変化ないじゃない」

第四位の原子崩し(メルトダウナー)は拍子抜けした、とでもいうような態度をとる。
それをみて蒼南は静かに口を開いた。

「そういえば、あなたの名前を聞いていなかった。教えていただいてもいいですか?」
「は?麦野沈利だけど?」
「そっか……じゃああなたが、第四位の原子崩し(メルトダウナー)ですか」
「なにこいつ」

蒼南は力なく笑うと、ゆっくりと傷口に氷を張った。

「血止めをしておかないと。結構傷口が深いみたいなので」

待て、と。
俺は自分に問う。

ここからは俺の予測でしかない。
だが、何かおかしい。
もしこのような対処ができたのなら、俺が攻撃したときにでもできたはずだ。
なのに、なぜ今できてあの時はしなかったのか。
冷静さを欠いていた、ただその一言で片づけられるのだろうか。
俺の中の直観が言っている。
否、違うだろう、と。
思わず俺は後ろへ下がった。

「なんで下がるんですか?ひどいなあ、一方通行」

次の瞬間、長い棒のようなものが俺と麦野を襲った。
棒ではない、これは氷柱だ。


「よけないでください。ちゃんと殺せないじゃないですか」


白ノ乙女は、怪しい笑みをうっすらと浮かべていた。