一端覧祭のあの日以来、俺は未元物質で自分自身を形作っている。
時にカブトムシであったり、時に本来の垣根帝督の姿であったり。
その時々に合わせ、臨機応変に使い分けていた。

今日は恋人、六花と一緒に過ごす約束の日だ。
2人でルームシェアしているマンションのリビングでくつろぎながら、昼食を作る彼女の後姿を眺めている。

うん、可愛い。

こいつとは幼い時からの付き合いだが、年々確実に可愛くなっていっている気がする。
自分の彼女の欲目とか、そういうわけではなくて。

「まだかかるのか?」
「もうできたよー」

振り向いたと同時に翻るスカートに目をやると、六花は両手に手際よく皿をテーブルに運んだ。
まるでカフェに出てきそうなサラダとパスタのプレート。
うん、上出来。
料理上手で、家庭的で、気が利いて。
男からしたら文句なしの理想の彼女。
俺にはもったいないくらいの自慢の彼女だ。

「うまそうだな……」
「あ、だめだめ!これは私の分なんだから!」

帝督の分持ってくるから、待ってて?
そう言いながら首を少しだけ傾げた六花に、思わず可愛いと呟いてしまいそうになる。
どうやら俺はこいつに相当惚れこんでいるようだ。

「帝督のために、たくさん準備したんだからねーっ」

笑顔で冷蔵庫を開けて準備をする彼女を横目でみながら、思わずニヤつく口元を隠すように覆った。
幸せだ、俺。
生き延びてよかったと心底思う。

こいつを好きになって、本当によかった。

「はい!」

コトッ、とテーブルに皿を置いた音が響く。
目の前の六花は、にこにこと可愛らしい笑顔を向けていた。

「たくさん食べてね!」

一瞬、目を疑う。
思わず皿と六花を何度も交互に見返した。

「……これ、俺の?」
「うん、そうだよ?」

結構高かったんだからねーっ!
そんなこと言いながら、自慢げなドヤ顔の彼女。

「食べないの?」
「いや、食べないのって……なんで俺の昼飯、ゼリーとスイカ?」
「だって、帝督カブトムシでしょ?」


この間、3秒弱。
こいつを好きになって、本当に良かったのだろうか。
俺は自問自答を繰り返した。


彼氏様はカブトムシ




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