今日は六花さんの家に4人で遊びに行く約束をしている。
最近まで元気がなかったけど、どうやら以前のように戻ったみたいだ。

「お姉様。久しぶりですわね、蒼南さんにお会いするのは」
「そうねえ」

黒子と目を合わせてながら笑う。
最後に遊びに行った日からあった、様々な出来事を思い返す。
今日のおしゃべりもきっと盛り上がるだろうなあ、なんて。
そう思いながら視線を青色一面の空に移した。

「いたいた!御坂さん!白井さん!こっちですよー!」

少し離れた場所で佐天さんがこちらに向かって大きく手を振っている。
その横では初春さんが同じように笑顔で待ち構えていた。

「初春さん、肩の調子はどう?」
「大分いい感じです。リハビリを続けて、徐々に回復してきてます」
「そっか。よかった」

合流して初春さんに問えば、笑顔でこちらに応えてくれた。
4人で騒いでいたらあっという間に六花さんのマンションに着き、解除してもらったオートロックを潜って部屋まで向かう。

「……あれ?」

ドアの前に着くと、季節はずれなカブトムシが一匹。
なぜか壁にへばりつくように止まっていた。
そのカブトムシは普通のカブトムシとはどことなく違う。

「白いカブトムシ……?」
「えええ!!!白のカブトムシ!?」

白のカブトムシ。
その単語を聞いた瞬間に佐天さんの表情は一気に明るくなった。

「それって、今一番ホットな都市伝説のカブトムシじゃないですかあ!?」

いつものように得意げな表情で、早口で捲し立てる。
その瞳はまるで恋する乙女のようにキラキラと輝いていた。

「困った時に、助けて、カブトムシさん、って唱えれば白いカブトムシが助けてくれるっていう、ファンタジーな都市伝説があるんですよ!」
「ちょ、ちょっと佐天さん!落ち着いてください……!」
「これがきっと、噂の白のカブトムシですよお!!!」

息を荒くしてカブトムシを捕まえようとする佐天さんを必死で初春さんが押さえていた。
あまりの豹変ぶりに、ただ苦笑して眺める事しかできない。

「ちょっと、どうしたの?」

騒ぎを聞きつけたのか、佐天さんの大声に驚いたのか。
部屋の中から六花さんが慌てたように顔を出した。
そしてそれとほぼ同時に白のカブトムシが六花さんの部屋に入り込む。

「蒼南さん!そのカブトムシ、都市伝説の白のカブトムシに違いありません!捕まえてください!」
「ちょっと、さ、佐天さん!落ち着いてくださいってば!!」
「ああ、これ?」

六花さんは部屋の中に入ったカブトムシを軽々と掴むと、手の上にちょこんとのせた。

「そんなご利益のあるものじゃないわよ、これ」
「え?そのカブトムシ、六花さんのなんですか?」
「え……う、うん……」

なぜか頬を赤らめながら六花さんは答える。
その様子は、以前彼氏さんの話をしてくれた時の六花さんの姿と重なった。

「あのね……これ、私の彼氏なの」
「………へ?」

その場にいた全員、声をそろえて間抜けな声を出した。

「みんなに紹介するね。……ほら帝督、早く早く!」

六花さんの言葉と同時に、カブトムシはいきなり1人の痩身の男の人へと姿を変える。
突然の出来事について行けず、開いた口が塞がらない。
そんな私達には構いもせず、六花さんは照れたような万弁の笑みを浮かべていた。


(その後、六花さんの指示でずっと初春さんに向かって土下座をさせられていた垣根さんの、生気を失ったような顔つきが未だに忘れられない。)


彼氏様はカブトムシ2




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