今日もまた夢をみる


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ピピピピピ、ピピピピピ、
ピピピピピピ・・・・


「・・・時間だ。そろそろ起きる」
「えっもう?さっき来たところじゃない?」
「最近忙しくてな」
「あんま無理しちゃだめだよ」


遠くで電子音が鳴ったら、それはこの束の間の安寧の終わりの合図だ。

俺は菜々子が入れてくれたコーヒーを一口飲む。


「菜々子も今日は遅いんだろ?月末だし」
「うんー。まあ零よりはマシだけどね。もっとちゃんと寝なよ」
「ああ。じゃあまたな」
「はい。いってらっしゃい、気をつけてね」


そして部屋の扉を開けた。
二人だけの空間。遮断された平穏。閉ざされた世界。


それに終わりを告げ、今日も菜々子に背を向ける。

ふと振り返ると、菜々子はいつも通りの笑顔で手をひらひらと振っていた。
そしてその空間が少しずつ白んでいき、菜々子ごと、消える。


ピピピピピピ、ピピピピピピ、
ピピピピピピピピピピピピ・・・


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「ん・・・・・」


目を開くと、自分の褐色の腕が見え、ほぼ無意識に目覚ましを止めた。

まだ陽は昇ってすらいない。暗い外は、自分を夢の中に留めようとしているかのようにすら見える。


「・・・確かに、もう少しくらい休むべきかもな」


呟きは静寂に溶けた。





























「ふぁあ〜・・・」

電車の中で大あくびをする。昨日夜更かししすぎたなあ。


まあまあ満員電車にも関わらず、運良く席を取れたので到着まで少し眠ることにした。
今日は月末処理で帰りが遅くなるだろう。何時くらいになるかな、と考えるとそれだけでどっと疲れるような気がした。


辟易しながら目を閉じる。するととなりに座っていた女子高生の話し声が耳に入った。


「そういえば私も今日そんな感じの夢見たよ〜」
「えっほんとー?」
「ほんとほんと、やっぱテストいやだからだろうね〜」


ああテスト期間なのか。学生も学生で大変だよね。
夢の中でまでテスト勉強に苦しめられているらしい二人の声になんとなく耳を澄ましてしまう。



夢か。

そういえば、今日、夢の中で誰かを心配していた気がする。



夢。


私はよく、夢を見る。

いや、夢は誰でも毎晩見ているらしいけど。


でも起きたらほとんど思い出せなくて、何故か少し胸が苦しくなるのだ。


暗闇の中たった一人で、手探りで何かを探しているような焦燥感と寂寥感。


いつも何かが足りないような気がするのはどうしてだろう。大事なピースが欠けてしまっているような気がする。


・・・いい年して彼氏どころかいい人もしばらくいないから、そんな風に思うのかなー。


大きくため息をつきたいような衝動に駆られながらも、私は微睡みの中に落ちていった。





























「ハッ!」


起きてすぐに目に入ったのは自分の通勤用の鞄だった。


どれぐらい寝た?!寝すぎたのでは?!妙にスッキリした体に焦りを覚える。いまどこだ、とガバッと頭を持ち上げた。


「えっ・・・」



そして固まった。



真っ白な世界に、私は座り込んでいたのだ。




「ゆ、め・・・?」



そういえば、この白い空間。
なんだか覚えがある気がする・・・。



「ッ、」


そう思った瞬間走った頭痛に思考を阻まれた。

私はどこに、来てしまったんだろう。






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