目が覚めても
「(古着とかひっさしぶりに買ったな・・・)」
沖矢さんに連れてきてもらったのは大型ショッピングモール。お金はわりとあるけれど、現在無職無収入のクソニートなうえジャージ以外一着も服がない初期装備の状態なので安価なものを大量購入してしまった。
なんていうか、ほんとついこないだまではデパコスをシャブのように使い綺麗目な服に巻き髪でいい感じのOL気取ってたんだけどな・・・おたく隠すために・・・おかしいな・・・。
化粧品も、改めてこの世界のトレンドとか確認してからにしようとお泊まりのとき用化粧品セットみたいなやつを買ったしスキンケアやボディケア用品も同様。ショッピングはもうちょっと落ち着いたら楽しみましょう・・・っていうか私ほんとにここで落ち着くのか・・・?
自問しながらちらりと壁にかかっていた時計を見ると、11時45分だった。
ショッピングモールに着いてから、沖矢さんとは別行動をしている。やっぱり性別的にも買い物内容からも男女別々の方が楽なので。
12時になったらお昼を一緒に食べようと約束したので、とりあえず待ち合わせ場所に向かおうとおもう。
「(手がちぎれる・・・)」
にしても、ちょっと買いすぎた気がする。あっでもお昼食べた後、携帯は見にいきたいなあ。
「何かお嫌いなものとかありますか?」
「あ、なんでもおいしく食べます!」
「じゃあ、とりあえずここにしましょうか」
無事沖矢さんと合流できたので、手頃なファミレスに入る。
もっとおしゃれなお店もあったけれど、さすがにすっぴんにジャージで入るのは・・・と躊躇うとまたの機会に、としてくれた。いやー紳士ですね沖矢さん・・・。
「結構買いましたね。重かったのでは?」
「はは、ついうっかり」
「もしまだ他にもいろいろ買うなら、一度車に置きに行きますか?」
「あ、いえ。あとは携帯だけとりあえず買おうかなって・・・。ありがとうございます」
「そうか。携帯も壊れてしまったんですよね、本当に災難でしたね・・・」
まあそんな記憶ないしたぶんそれってこの世界に馴染みやすいように作られた設定なんだろうけどなあ、と思いながら乾いた笑いを返す。
ああでもわたしのスマホちゃん・・・。愛と萌えがいっぱい詰まったわたしのスマホちゃん・・・・・。
「携帯はどの機種にするんですか?」
「あー・・・まだぜんぜん決めてなくて・・・というかそのへんの事情覚えてなくて。オススメとかありますか?」
「僕もあまり詳しくないですが、そうですね・・・よかったら後で一緒に見にいきますか?」
「え!!!そんな、ご迷惑では・・・」
「自分の買い物はもう終わりましたし、一人でその荷物を持って歩くのも厳しいでしょうから。携帯くらい付き合います」
「あ、ありがとうございます・・・」
これが神か・・・・・。
その後無事携帯を購入し、できたての連絡先を交換してお買い物を終えた。
沖矢さんとのお買い物はとても楽だった。最初は緊張していろいろ話さないと・・・と思ったけれど、よく考えたらしゃべらないほうが楽そうな人だし終始のんびりとして終わった。よかった。
そして車で工藤宅へと連れて行ってもらった。非常にデカイ。
「立派なお屋敷ですねえ・・・」
「そうですね。そうだ、これ作っておいた合い鍵です。許可は取ってあるので、どうぞ」
「あ、ありがとうございます!」
そういえば、と渡された合い鍵。ひんやりとした感覚に、ああもう本当にここで住むんだ・・・と改めて思った。もう、きっと本当に夢じゃないんだろうな。
「じゃあ、荷物入れるの手伝いますよ。このへん持ちますね」
「わ、そんな何から何まで・・・!」
「これくらい大丈夫です、一応男なので」
そして沖矢さんはわざわざ私の荷物までいっしょに運んでくれた。今度お礼に何か買ってこよう・・・。
ギィイと音を立てて扉を開け、入った工藤宅はやはり見慣れたもので。
興奮と感動が少し湧くけれど、夢じゃないと判断し始めている私は胸の痛みのほうが勝った。
そのまま沖矢さんにこれから自分が泊まる部屋を案内してもらう。
客室らしいが充分広く、さすがだなあと思うばかりだった。
とりあえず荷物を置き、他の部屋の配置を教えてもらう。洗面所とかリビングとか。
どこも立派で、生活臭漂う自分の家が霞んで見えなくなるような気がした。
「どこも内側から鍵をかけられるようになっているので大丈夫かとは思いますが、何かあれば遠慮なく言ってくださいね」
「あ、はい!ありがとうございます。沖矢さんも、私気が回らないので、何かあれば言ってください」
「わかりました」
一通り案内してもらいお礼を言った後、沖矢さんにそう言われた。
シェアハウスみたいな感じだと思えば、楽だろう。個室で鍵もついていれば、お互いそんなに心配になることもないだろうし。
私は改めて沖矢さんに向き合い、ぺこりと頭を下げた。
「・・・これから、よろしくお願いします。沖矢さん」
「はい、こちらこそ」
かくして。
沖矢さんとの共同生活が始まるのだった。
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