夢うつつ
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『わたし、クラスがかわるまえに、優くんにこくはくする!』
『ええ?!すごいね!!!』
小がっこうからのかえりみち、友だちがいった。
『ねえ、菜々子ちゃんはすきなひといないの?』
すきなひと。
わたしのすきなひとはだれだろう。
いちばんさいしょにうかんだのは、いつもゆめにでてくる零だった。
『いるよ』
『わあ!だれ?崇くん?』
『ううん、零っていうの』
『れい?ならいごとのひと?』
『ちがうの、いつもゆめにでてくるの』
『ゆめ?』
そのこは、おめめを大きくしたあと、まゆをよせて、いった。
『へんなの。ゆめのなかのひとは、すきになれないよ?』
わたしはびっくりして、なきそうになったけれど、びっくりしすぎてなみだはでなかった。
『なれないの?』
『なれないよ。いないもん。菜々子ちゃん、へんだよ』
そうなんだ。
れいはいないんだ。
わたしはへんなんだ。
その日ゆめにでてきた零は、またケガだらけだった。
『零!またけんかしたの?』
『おれはわるくない』
ぶすっとむくれる零。
ああ、きょうもかっこいいけど、しんぱいだなあ。
ケガしないでほしいなあ。
『しんぱいだよ。ケガさせるようなひと、ほっときなよ。わるいこでしょ?』
『べつにいーんだよ。それに、わざとだから』
『わざと?』
『おう。なおしてくれるひとがいるんだ』
うれしそうに零は、じぶんのほうたいやばんそうこうをみた。
ああ。まえに、いってたかも。おねえさんに、なおしてもらったって。
『そっかあ』
そうか。
零にはすきなひとがいる。
そしてわたしが零をすきになるのは、へんでまちがったこと。
わすれよう。
おきたらぜんぶ。
零のことは、わすれよう。
『菜々子、アンタ最近夢の中の零くんの話しないわね』
『え、零くん?だれ?』
『いつもしてたじゃない。夢の中にでてくる男の子の話』
『?』
『まあ、忘れたならいいけど』
お母さんはそう言った。
れいってだれだろう。
まあでもお母さんはよくかんちがいをするから、またそうだろうと、わたしは気にしなかった。
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「ムニャ」
目が覚めた。見慣れないカーテンが目に入る。
ああ、そうか・・・ここ工藤宅の客室だっけ。
やっぱりまたこの世界で起きてしまったかあ、と私はため息をついた。
なんか、あんまり覚えてないけど昔の夢を見ていた気がする。まあこの状況のほうが夢っぽいんだけど。
とりあえずトイレに行こう、とベッドを出る。
扉を開けて廊下に出た瞬間、なんだかいい匂いがした。
「おはようございます」
「ああ、おはようございます。よく眠れました?」
「はい!」
「それはよかった。あ、ちょうどこれからトーストとハムエッグを焼くんですが、中村さんも食べますか?一緒に作りますよ」
「え、いいんですか?!」
「はい、ついでですし」
「わあー、ありがとうございます!次は私が作りますね」
寝ぼけ眼でキッチンへ向かうと、今日も麗しい沖矢昴さんが朝食を作っておられた。
ヒェーーーー全国の沖矢派(赤井派)に刺し殺されても当然の事案だーーーーー私は安室派だけどーーーーーーー!!!!!!!
「コーンスープ入れておいていただけます?食器はそこにあるので」
「はい!」
ああ、いい匂いのもとはこのコーンスープかあ。こんなに朝からちゃんと食べることなんてめったにないから嬉しくて思わず鼻歌でも歌ってしまいそうだ。
「沖矢さんは朝からちゃんと食べてえらいですね」
「そうですか?」
「私はいつも起きれなくて、朝ごはんを抜きがちになったりするので」
「・・・ホォー」
やっぱり朝はちゃんと食べないとダメだよなー、元気でないし。
でも働いてるとギリギリまで寝たくなるんだよなあ・・・。そんなことを思いながら、私はコーンスープをテーブルに運んだ。
今日も天気がいい。改めて、化粧品とか買いに行こうかなあ。
「はい、お待たせしました」
「ありがとうございます!」
飲み物を入れていたら、完成したハムエッグとトースト、そしてサラダを持って沖矢さんが来てくれた。
お礼を言って、二人で座る。
「作ってくださってありがとうございました。いただきます!」
「はい。いただきます」
そしてコーンスープに口をつけた。とっても美味しかった。最高。そのままの勢いでハムエッグとトーストも食べる。サラダもおいしい。なんて理想的な朝ごはん。
「おいしいです!」
「それはよかった」
私は夢中で朝ごはんを食べた。すごい勢いで箸が進む。イケメンの作ったおいしい料理、最高である。感謝。
「今日は一日何されるんですか?」
「ああ、自室で研究を進めようかと。中村さんはどうするご予定ですか?」
「私は改めて化粧品とか服とか買いに行こうかなって」
「なるほど」
その後も少し談笑をして、ごはんを食べ終えた。沖矢さんは本当、あんまりしゃべらなくても別に問題ないひとなので楽だなあ。
「ごちそうさまでした!洗い物は私がしますね」
「自分の分くらいやりますよ」
「いえいえ!作っていただいたのでお任せください!」
「では、お言葉に甘えて」
そして私は洗い物にとりかかった。ウーン、いい1日の始まりって感じがするなあ。
そして洗い物を済ましたあと、自室に戻って昨日買った服に着替え、化粧をして外に出た。
デパコスとかちゃんとしたお洋服のお店って、すっぴんにジャージじゃ入りくかったから今日改めて買おう。
昨日携帯で調べて良さそうな化粧品はだいたい目星をつけているし、いい買い物ができたらいいなあ。
そう思いながらデパートを目指して歩いていると、なんだかおしゃれでかわいらしいカフェを見つけた。メニューには写真が載っており、どれもとっても魅力的だ。
「(特にこのミックスジュース、めちゃめちゃおいしそう・・・)」
入ろうかなあ、ウーン・・・と悩んでいたらテイクアウトもできると書いてあり胸がときめいた。
これを買って飲みながら向かおう!
「ねえバーボン。まだ取引まで時間があるし、先に何か食べない?お腹が空いたわ」
「そうですね・・・そうしましょうか。何がいいですか?」
「軽くつまめるものがいい」
「つまめるもの、ですか・・・」
朝一番の打ち合わせの後、取引場所に向けて車を走らせていたら、隣に座っているベルモットが言った。
確かこの辺りに雰囲気のいいカフェがあった気がする。あそこなら車も止められたはずだ。
「カフェで問題有りませんか?」
「ええ」
「たしかここを曲がった先に・・・!ッ、」
そう言いながらハンドルを切る。
そして目に入ったものに、言葉を失った。
「な・・・んで、」
「?どうかしたの」
「あ、いや・・・」
そこで、見たものは。
いつも自分の夢に出てくるとても大切な存在。
菜々子が、まさに自分がいま行かんとする喫茶店から飲み物を持って出て行く姿だった。
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