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恋って人生を変えるよね。


ひとつめ。
中学二年の夏。
同じ部活の男子と付き合ってたけどフラれ。
メンタルの弱い私はその彼に会いたくないという理由だけで卓球部をやめた。
卓球は3歳から習ってたし、全国大会も出場できるくらいには真剣にやってたのに。
続けていれば今オリンピックで活躍できてるかはともかくとして、今思えば失恋くらいでやめるべきではなかったと思う。あんなに打ち込んでたの、卓球くらいだったのに。


ふたつめ。
高校3年生の冬。
センター試験の直前、なぜかそのタイミングで彼氏に俺大阪の大学受けるから、という理由でフラれた。私のメンタルのこと何も考えてないし、ほんとにもう訴えてもいいレベルだと思う。
実際に彼は大学受験も成功し大阪に行ってしまったが。私は切り替えられるはずもなく、センター試験はぼろぼろ。
模試では毎回A判定だった地元の国立大学に落ち、東京の私立大学に進学。神奈川の実家からは通える距離なのに、親が一度は一人暮らしをさせたいってことで一人暮らしをさせてもらってる。学費と家賃と生活費、お金いくらかかってんのかな、とか考えちゃう。恋のせいで親にも迷惑をかける始末。


大学に入って、なにもなかったわけじゃないけど。

間違えなく恋に臆病になってるのがわかる。

男性をどうも信用できなくて、何かあった時もなんとなくそれをすべて客観視してしまう。

恋するって入りは甘酸っぱくて楽しいのかもしれないけど、深入りしてくだらない期待を相手に寄せてるだけで、あっという間に人生変わる。

一人の男のために私の人生これ以上振り回されたくない。

自分のこと大事にしてくれる優しい人に出会えて結婚して、もうそれだけでいい。

好きなんていう一時の感情はいいや。

そんな風に冷めた気持ちを胸に秘めながら、あっという間に大学四年生、もう22の秋。

就職も無事にきまり、もうあとは遊ぶだけ。

バイトもやめたし、最高に楽しい毎日!

ほら、恋なんてしなくても十分人生楽しいよ。

………なーんて思ってた。




あなたに出会って、やっぱり私の人生、変わっちゃったね。







「菜穂の彼氏って関ジャニの安田くんなの?!」

硬式テニスサークルの活動帰り。
一番仲のいい菜穂に少し話があるんだけど…と言われ大学近くの喫茶店に入って、衝撃的な告白をされた。

菜穂は口に人差し指を添えながら落ち着いてって言うけど、そんなことを突然言われてびっくりしないわけがない。

芸能人なんて。しかも有名な。

そういう話に疎めな私でも一応、名前くらいは知ってる。

「ずっと言えなかったんだけどさ…もう実は1年くらい付き合ってる」

「まじか…」

確かに菜穂は可愛いしモテるのに、誰とも付き合ったりしなくて少し不思議だった。

私自身、恋とかそういうのに冷めてるからもしかして菜穂も…なんて勝手に思ってたけど、そうじゃなかったのか。

「別に苗字のこと信用してないとかじゃなかったんだけど、苗字とそういう話あんまりしないし、相手も相手だからなかなか言えなくてさ…ごめんね」

「ううん。気にしてないから、大丈夫」

そりゃ簡単に人に言えるわけない。私でも言えない。

「そっかあ…すごいなあ、菜穂」

良く分からないけど、菜穂がすごい人に好かれてることだけは分かる。

「それでさ…私が苗字の話ばっかりしてるから、章大くんが苗字に会いたいって言うの」

「えええ?!」

「私も章大くんのこと、苗字に紹介したいなって思うんだけど、だめかな?」

衝撃的なお願いされて、ただただびっくり。

もうなんか、現実味がなさすぎる。

夢でも見てるのかな、私。

「うーん、まあ、いいけど…」

何の話するんだろう?なんて思いながら、芸能人を見てみたい私も、少しだけいて。

菜穂の彼氏、見てみたい気持ちもあるし。

「やった!じゃあいつがいいいかなあ」

にこにこしてる菜穂が可愛くて、きっと安田くんのこと考えてるんだろうなあって。

恋って、人によってはやっぱり楽しいものでしかないのかな。

いいなあ。

私は恋の神様に好かれてないのかもしれない。

なんか悪いことしたかな?なんて、思う。

まあ、いいけどね。

ちょっとだけ、羨ましいけど。