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「とんだ災難だったね」
「いえ…別に、予想はしていた事ですから」
本日訪れた秘密のお客さんはそう言いながら黙々とバスタオルで体を拭いた後、無駄な動き一つせずあっという間に着替えを済ませていた。騒がしかった脱衣所の外はようやく静まり返り、そっと暖簾を捲って様子を窺うと、隅の休憩処のソファーに看板娘が湯気立つ湯呑を抱えてお茶を飲みながら静かにテレビを見ている。
「どうやら、オロシちゃんが上手くやってくれたみたいだ」
「ああいう事は得意ですからね、アイツ」
「…でも、やる事済んだら戻ってくるって言ってたんだけど…何処行ったんだろう。焼きイカちゃんもいないし」
「トイレかどこかじゃないですか。落ち着きないのは今に始まった事ではないので」
片脇に桶を挟みながらサファリハットを深めに被った彼は、ぼりぼりと後頭部を掻き毟りながら零すように返した。
(…やっぱり、何度見ても中性的な子だなぁ…)
恐る恐る暖簾を潜り、外に誰もいない事を再度確認し、脱衣所を後にする彼の背中を追うように見遣っては、初めて会った時の事を思い出しながらそっと心の中で呟く。
てっきりガールだと思っていた。スラッとした顔立ちに綺麗な肌、細身の身体に顔の両脇に垂れた秋色の長い髪。キリッとした細い瞳の視線に射された時は思わずびくりと身体を震わせてしまう。後々になり、フデオロシちゃんからボーイだと聞かされた時はさすがに耳を疑ったものだった。思わず四、五回は聞き返したものだから今だに時々難聴ジジイだなんて呼ばれる(ジジイじゃない、まだおにいさんだ)。絶対に口外しない事を条件にその秘密を知り、銭湯に入った事が無いという彼が気を遣わずに足を運べるよう、今日はせっかくなので貸切の時間帯を作ってゆっくり風呂を楽しんでもらう事にしたまでは良かったのだが、起こってしまうかも知れないアクシデントが当たり前のように次々と発生してしまい、ゆっくりする間もなくドタバタと慌てて風呂から上がっては現在に至る。
彼が何故、普段から一見ガールに見える格好をしているのかまでは知らない。しかしボーイだろうがガールだろうが、ここの風呂に入りたいというならば全員大事なお客様であり、差別をするつもりは毛頭なかった。ましてや、彼女の大事な友人となれば、本人の希望を頂ければまた気軽に来て欲しいくらいである。
「…あ、そうだ。コーヒー牛乳でも飲んでいくかい?」
「え、あぁ、でも…」
「今日は初入湯記念って事でサービスだ。待ってて、今持ってくるから」
「はぁ、すみません。色々とお気遣いありがとうございます」
店の隅っこにある休憩処で待っているよう促し、番台の真横に佇む中身が見えるガラス張りの小さな冷蔵庫の扉を開けて、陳列された数種類の小瓶から一番手前のものを選び手に取った。自分とソファーでお昼寝をしている看板娘の分も取り出し(ミックスフルーツとイチゴ)胸に抱えてはキンキンとぶつかる音を立てながら来た道を戻る。
「勝手にコーヒーって言っちゃったけど、ごめん。そういえばイチゴとかもあった」
「いえ、お構いなく。コーヒーで大丈夫です」
「そっか。じゃあ、これ」
「ありがとうございます、いただきます」
彼に一つ手渡し、自分と横になって寝ている看板娘の頬にぴとっと冷たい瓶を当てるとぴゃあと変な声を上げながら飛び起きつつもしっかり受け取った。そしてテーブルを挟んだ向かい側の真ん中に彼は座ると、すっかり喉が渇いていたのでお先にと早速瓶の蓋を取って天井を見上げながらごくごくと一気に飲み干す。我ながら気持ちのよい飲みっぷりを披露しながら、ぷはぁと大きく息を吐き出しているとふと呆然とこちらを見詰める熱い視線に気付いた。
「………早い」
「慣れだよ、慣れ」
「へぇ…なるほどね……」
直感で、案外負けず嫌いなのかも知れない、と思った。少し固いままだった表情がすっと前屈みに傾いたサファリハットの中へ隠れ、指先でピンと瓶の蓋を跳ねた彼は、見よう見まねで一気に顔を上げそのまま勢い良く口内へとコーヒー牛乳を流し込んでいた。隣りの看板娘がまだ半分程残っているイチゴ牛乳を片手にいつの間にかストップウォッチを手にしていて、瓶の中身が空っぽになり彼がそれをテーブルに叩きつけた瞬間、同時にピッという電子音が小さく響いた。
「…ななてんろく秒!」
「オッサンは何秒だ」
「えとね…ななてんななご秒!」
「……っし!」
「どっから持って来たの、それ…」
「この間ね、お店の向かいの倉庫で拾ってきたの」
「あ、そうですか…」
静かなガッツポーズが空気を切り裂き、そして明らかに型の古い計測機器を嬉しそうに握り締めながら、まだ残っているイチゴ牛乳を再びちびちびと飲み始めた彼女を見て小さく溜息を吐いた。
「負けてしまったものは仕方がない。次回までに修行しておきますよう」
「何度でもコテンパンに打ち負かしてやりますよ」
「うぅ…最近の若い子こわい。おにいさん、凹んじゃうからたまには勝たせてね」
「そうですね…。またサービスしてくれるなら、考えてもいいです」
「……ふふっ、分かったよ。またのご来店を楽しみにお待ちしておりまーす」
再び顔を見せてくれるらしい彼の言葉で素直に嬉しい気持ちになり自然と笑顔を零すと、少しだけ柔らかくなった彼の表情がつられるようにそっと綻んでいた。いつ、などという細かい約束はしない。でもいつか必ず、またこの銭湯へと足を運んでくれる。そう確信できるだけで胸が高鳴るようにほんのりと温かみを増した。
(またひとつ、楽しみが増えたなぁ)
心の中でそうほくそ笑みながらその後も三人で世間話を交わしていると、次第に男湯の方からぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる声が聞こえてくるのに気付き、そっと互いに顔を見合わせる。
「何だろ」
「……あの声は」
非常に聞き慣れている、と言うよりは直前まで聞いていた二人分の野性的な叫びが不規則にツーンと耳から入っては脳内を引っ掻き回してきていて(酷い言い回しをしたが勿論ガールの声である。)、どうやら何か不穏な事件が男湯で起きている、とお互い何かしらの異常を察して顔を見合わせては瞬時に頷き、よっこらしょと重い腰を上げると、そろりそろりと足音を立てずに暖簾の前まで忍び寄ってみる。
「予感、的中ってヤツかな」
「そうかも知れません。被害者は大体想像がつくので助けに行ってきます。えと…男湯、入りますね」
「あぁ、うん。ご自由にどうぞどうぞ」
呆れた口調で許可を取り、肩を落としながらとぼとぼと脱衣所へと入っていった彼は、風呂に入って少しはのんびりしたはずだというのに哀愁が漂っている背中を見せつつゆっくりとその姿を消していった。そして、その直後には腹の底から発せられた、爆発音のような怒声と切ない二つの悲鳴が店内を揺らす程に大きく響かせたのだった。
***
「はぁ、はぁっ…」
「クッ…もう少しダッタってのにヨォ…」
「わははは、惜しかったねー」
「惜しくない! 何も惜しくないからッ!」
暖簾を潜った先は文字通り地獄絵図だった。といえど、その地獄という表現が正しい状態にあるのはこの場にいる中でもとりあえず一人で、悲しいかなその人物は腰に巻かれたタオル以外に何も身につけていない、しかも今にもはだけてしまいそうな状態という惨い格好となっている。他の二人はというと、フクを着ているには違いないが全身ずぶ濡れでほかほかとした白い湯気が体中から立ち昇っていた。
「で、二人してこんなところでパッチン囲んでナニやってたんだ。あぁ?」
「はれ? てかハットちゃんじゃん! 何でここにおるんや? もしかして用事ってお風」
「まずはこっちの質問に答えろ、このアホタレ」
「いだだだっ! ほ、ほっぺ、ほっぺ摘ままないでえぇー!」
相変わらず全く人の話を聞かない焼きイカに制裁を加えつつ、すぐ隣りで腹を抱えて笑っているフデオロシをぎろりと睨んだ目で見下ろした。
「作戦はバッチリだったハズなンだケドナァ」
「だから何だよ、その作戦って」
「ダーリンのチンニギ」
「ニギして遊ぼう作戦」
「分けて言えば許されると思うなよ」
どうせそんな事だろうとは思ってはいたものの、本当にそうだったのだと現実味を帯びた途端、風呂へ入る前よりもどっと疲れが増したような気がした。
こういうどうでもいい事に関しての二人の結束力は何故だか異様に強い。何かとチャンスが巡ると前もって話し合っていた訳でもないのに、今こそパッチンのアソコを協力して狙おうという謎の意思疎通を唐突に取り始める(お前らは超能力者か、と問いたい)。
そんな無駄なやる気が突然発起する原因は未だ不明ではあるが、的確な判断力と行動力、ナワバリバトルでは率先して相手を倒していくあのパッチンを毎度追い詰めているのだから、その点に関しては称賛を送らざるを得ない(しかしあまりにくだらなすぎるので送らない)。
「はぁ…いつもの事っちゃいつもの事だが、あんまりいじめてやるな。今回も、ちょっとやりすぎだ」
「ハーイ」
「しくしく…俺もうお婿に行けない…」
「安心しろ、嫁にはいつでも行ける」
「いや、あの、それ全然励ましになってないです…」
いそいそとパンツを履いては膝を抱えるように座り込み滝のような涙を流しているパッチンの隣りで、(別にしょんぼりする要素など一つもないのに)つまらなそうに壁に背を預けて俯いている焼きイカを見た。怒られた事がそんなに悲しかったのか、それとも少し頬を捻り過ぎたのか、何が彼女をそうさせているのか分からないがそんな拗ねた様子を見兼ねて仕方なく声を掛けてやる。
「……」
「おい、どうした」
「別に…なんでもないもん」
「…納得いかないなら、弁解の一つでもしてみたらどうだ」
「じゃあする!」
「へい、どうぞ」
待ってましたと言わんばかりに、ごほんとわざとらしい咳払いをしてから彼女はこちらの目を真っ直ぐに見ながら言葉を続けた。
「………みんなで一緒に入りたかったの」
「一緒にって…風呂に?」
「うん。でも、今日はパッチンくんと二人だったから、どうしたって入る時は一人になっちゃうでしょ? つまんないなぁって思ってたら、オロシちゃんが男湯は空いてるって言っててパッチンくんが先に入るって言うから、じゃあ便乗してアタシも男湯に入っちゃおう! みたいな」
「え…おかしくない? 絶対その発想はおかしいよね?」
「…あぁ。だからそんな水浸しなのか、お前」
「そーそー。ついついテンション上がっちゃってさ、オロシちゃんとフク着たまま二人で飛び込んじゃったよね。パッチンくんが入ってた湯船に」
「で、ついでにニギニギしちゃおうミタイナ」
(うわあ、かわいそう)
「くっ、どうせ俺の話は誰も聞いてくれないんだ!」
ついで、というのが一番意味の分からない部分だったが、このままではいつまで経っても埒があかないので、チンにぎの件に関してはもう何も気にしない事とする。今までで一、二を争うくらいのレベルでパッチンに深く同情をしていると、くしゅんと可愛らしいくしゃみが二つ脱衣所の中に小さく響いた。
「あー…ざむい! もう一回入ってくる!」
「バカかお前、入るんだったら女湯行ってこい」
「え? だって、今貸切になってて…」
「もう空いてる。お前らと違って、私はとっくの昔に上が…」
その瞬間、油断をしていたのかつい零してしまった自身の失言にすぐさま気付いて、胸の奥の何かにぴしりとヒビが入ってしまったような気がした。
(っ、しま…!)
言ってはいけない何かが口からぽろりと抜け落ちて、そう気付いた頃には時既に遅し。このままでは、本当に全てが丸裸になってしまう。無意識にも打ち明けてしまいそうになり、どうすればいいのか見当がつかず何も声が出なくなっていたその時、瞬時に呆けた顔をしている焼きイカの腕を引っ張り上げ、自らもずぶ濡れの体を立て直しながら強制的に彼女を女湯へと連行するフデオロシの姿が目の前を遮っていった。
「ああアアあサムイ、サムイナァー! オイ、焼きイカ行くぞ! 二人でフロ! 一人じゃネェンだからワタシで我慢しろヨ!」
「へ? あ、はーい! それじゃあハットちゃん、後でねー!」
「あ、あぁ…」
ずりずりと引き摺られるように脱衣所から消えていった台風のような二人と、そしてとり残された自分とパッチンが呆然としている中、外から暖簾を潜って入ってきた店主が苦笑しながら、しかし視線はこちらに合わせないままそっと小さな声で呟いた。
「あ、危なかった…」
「また、オロシちゃんに助けられちゃったみたいだね」
「……そう、みたいです」
「気を付けなよ。本当に、まだ言うべき事ではないと君の中で決めているのならね」
「…えぇ。分かって、ます」
「なら、よろしい。ほら、パッチン君ももう一回風呂入り直したら? 風邪引いちゃうから身体温めておいで。コーヒー牛乳、用意して待ってるからさ」
「え…あ、はい。分かりました。それじゃ、お言葉に甘えて」
何が何だが分からないというように疑問符を浮かべながら、再び着替えを済ませてそそくさと洗い場へと足を運ぶ彼の背中を見送ると大きく息を吸っては吐き捨てた。
(どうして、こんなにも、怖くなる)
本当に危なかった。つい油断をして口を滑らせてしまう所だった。それ程にも無意識に警戒心が失せていた自分自身にも途轍もなく驚いて、今でも心臓がどくどくと慌てて震えている。何に恐怖しているのか自分でも理解が出来ない。ボーイであるのを知られる事に何を恐れているのだろう。今はまだ分からないまま、冷たくなるこの手が酷く遠くにも感じて一人静かに拳を握り締めていた。
***
「あー気持ち良かった!」
銭湯からの帰り道、望まずともいつものメンバーが揃ってはいたものの、ハットさんだけはもう少しフデオロシちゃんと話をしてから帰るとの事で、結局は予定通りに焼きイカちゃんと二人で帰る事となった。泳ぎ回る程に銭湯を堪能し(しこたまフデオロシちゃんに怒られていた)、美味しいイチゴ牛乳もサービスでマゴさんに頂いて休憩処で暫しのんびりした後、日も暮れ始めたので真っ暗になる前に帰ろうとの事で二人お先にと店を出た。
看板娘ちゃんとまた遊びに来る事を約束して、外まで見送ってくれた皆に手を振っては帰路を辿る。しかし、随分とご機嫌モードだった焼きイカちゃんはてっきりハットさんと一緒に帰れるものだと思っていたらしく、今はほんの少しだけしょんぼりしながらとぼとぼと下を向きながら歩いていた。
「…ねぇ、パッチンくん」
「あ…何?」
お土産にと渡された温泉饅頭とイチゴ牛乳の瓶が入った袋を提げながら、いつもの元気さは何処へやら意気消沈した様子で焼きイカちゃんはぼそりと力なく独り言のように呟いた。
「あのね…その…」
「…焼きイカちゃん?」
「サイテーな事、言っちゃう、かも。それでも、聞いてくれますか」
軽快に進めていたはずの足がぴたりとその場に止まった。手足が少し震えている。普段では考えられないくらいのその声の小ささが、抱えている不安そうな気持ちを表しているかのようで堪らずゆっくりと頷いた。
「なんだか、その…誰かに話さないとどうしても、もやもやしてどうにかなりそうで」
「…いいよ。ゆっくり、話してみて」
「……うん、ありがとう。あの、ね…アタシの、勘違いだって、分かってるん、だけど。その…もしかして、ハットちゃん、てさ…」
アタシの事、嫌いになっちゃったのかな。そう揺れる声のまま呟いた彼女のぶつ切りに落ちる一つ一つの言葉が、まるで夢でも見ているのかと思ってしまうほど空に浮ついていた。全てが絶対に有り得ないものばかりで逆にそれが間違っているのかどうかさえ自信を持って否定出来なくなる程に。
「な、んで、そんな…」
「だって、ハットちゃん…アタシ達に嘘、ついてた。二人でおっちゃんとこのお風呂行くって、ちゃんと言ったのに」
「それは…」
「アタシ、何か悪い事したかな。ハットちゃんに避けられるような事、しちゃったかな。アタシ、不安で、もう疑わないって決めたのに、アタシ…!」
「ッ、焼きイカちゃん!」
「……!」
ばさりと、ビニール袋が地面に落ちる音がした。饅頭がクッションになってくれたのか、牛乳瓶が割れた様子はなかった。咄嗟に掴んだ彼女の腕は力んでいるのかがちがちに固まっていて呼吸も荒くなっていた。心臓が唸る。悲しげに歪んだ顔とそのピンクの大きな瞳に浮かんだ小さな涙を指先で拭うと、不規則な彼女の呼吸は次第に落ち着いていった。
「大丈夫、大丈夫だ。落ち着いて」
「はっ…はっ、あ、う、ん…」
「…ハットさんを信じて」
「ハット、ちゃんを…?」
「信じるんだ、あの人を」
根拠なんてなかった。でも、周りからすれば少々奇妙な関係を築いてきた四人は既に、目には見えない固い繋がりが作られ始めているのは明白だった。だからこそ、万が一何があったとしても必ずそこにはそうせざるを得なかった理由があるはずだと確信している。
「何かきっと、嘘をつかなければいけない理由があったんだ」
「つかなきゃ、いけない…?」
「そうだ。だって俺は知ってるよ。焼きイカちゃんを見るハットさんの表情が、いつも優しくてあたたかい事。だから、俺は絶対に、ハットさんが君を避けているなんて考えられないんだ」
「パッチンくん…」
「…本当は、ハットさんと、お風呂入りたかったんだよね」
「……うん」
「きっと、彼女からいつか本当の事を話してくれる時が来る。だから、一緒に待とう。その、いつかの日まで」
涙はもう止まっていた。ようやく彼女らしい明るい笑顔がそっと浮かんできて、胸の奥で激しく鼓動していた自身の心臓も落ち着きを取り戻しつつあった。
「…やっぱり、焼きイカちゃんは笑顔が一番だね」
「えへへ…なんじゃあソレ、口説いてるんか〜?」
「え、あ、はぁ? そ、そんな訳ないだろ!」
「そじゃろなぁ〜パッチンくんはオロシちゃん一筋だもんねー!」
「あぁもう、茶化さないでよ!」
「あはははっ! あ、パッチンくんかけっこ、かけっこしよ! あそこの公園までダーッシュ!」
「え? あ、ずるい! ちょ、待ってよ焼きイカちゃん!」
地面に転がった袋を掴み上げ、ぐるぐると振り回しながら先へと駆け出した焼きイカちゃんに度肝を抜かれ、呆気に取られながらも後を追うように走り出した。振り返った瞬間に耳に入った小さな言葉は上手く聞き取れなかったけれど、きらきらに輝いた彼女の笑顔は今の自分にとって十分な程の嬉しいメッセージだった。
(2016.07.08)
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